志賀二郎さんの映画レビュー・感想・評価

志賀二郎

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市子(2023年製作の映画)

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映画「市子」。今年の最高傑作。茹る暑さの元の人間を不穏な画と音で描く。杉咲花と中村ゆりの演技が脳裏を離れない。特にケーキ屋を開く話のシーン・罪が犯されたシーン・画面に出ることなく存在の全否定に全身で抗>>続きを読む

ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~(2020年製作の映画)

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映画「ヒノマルソウル」。物語は予想外に泥沼で、俳優部は素晴らしい。しかし、山場での西方・神崎・小林の対決は何故飛ぶかの根幹に関わる討論なのに、小林の啖呵が何故ヒノマルソウルへ話が収まってしまうのか。ご>>続きを読む

僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46(2020年製作の映画)

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映画 #僕たちの嘘と真実 見応えあり。鍵はTAKAHIROの「欅坂46の本質は他人の苦痛・不甲斐なさの背負人」。楽曲の世界を生きた平手友梨奈と演じた他のメンバーの差を埋め切れなかった。改名について楽曲>>続きを読む

ソワレ(2020年製作の映画)

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映画「ソワレ」。「わさび」の外山文治監督らしく音・色・画は静逸で美しいが物語は激しい。空家の一夜での女の影主導の踊りの妖しい美しさから、野外劇での男の冷酷さと女の激情を見通した・女の幻想的な美しさを経>>続きを読む

タゴール・ソングス(2019年製作の映画)

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映画 #タゴール・ソングス 詩歌が生活に溶け込み、人々の(時には対立しつつも猶)絆となる姿を活写。世界の豊穣さが段違いだろう。更に、花鳥風月だけでなく人や社会のあり様を問う歌が列車の上の青年や因習に抗>>続きを読む

アルプススタンドのはしの方(2020年製作の映画)

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映画「アルプススタンドのはしの方」@オンライン試写会。映画ならではの構図の取り方(宮下恵を外す)やカメラの揺れ(園田の応援で団結するシーン)、新たに登場させた久住智香の人物像の書き込み(LINEを送る>>続きを読む

閉鎖病棟ーそれぞれの朝ー(2019年製作の映画)

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映画「閉鎖病棟」。小松菜奈の珍しく受け身な役の演技が見事。特に、病院を出て星の見えない街の隙間で泣き叫び、それでも空腹に気付いて満たし、そして夜明けの空を見つめる再生のシーンの美しさと強さ。隙間から引>>続きを読む

左様なら(2018年製作の映画)

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映画「左様なら」@早稲田。やっと観れた。弛緩する直前の緊張の糸が張られたテンポ。物語は一見淡々と進むが、人物の激情が煌めく一瞬があり、物語を動かす(例えば綾に鋭い眼光を放つ愛美)。光溢れ人物自ら光を放>>続きを読む

ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形 -(2019年製作の映画)

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シリーズ初見の京アニ支援目的だったが、素晴らしかった。鮮やかな色使い・的確に使われる音と音楽・モチーフの多用等で人物の想い・シンプルな物語に厚みと深みを与えていた。余韻が残り反芻したくなる。次作も観る>>続きを読む

書くが、まま(2018年製作の映画)

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ひなのは独語から発話そして対話へ全力疾走し、有紀先生は言葉を取り戻し、各々生きる力を獲得する。2人は表裏一体。保健室でのSWANKY DOGSと中村守里の歌が先生への悪罵の紙切れたちを痛みから希望への>>続きを読む

記者たち~衝撃と畏怖の真実~(2017年製作の映画)

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映画「記者たち」。令和観初め。新聞記者と政府当局者の駆け引きがスリリング。何よりも、事実を市民に伝えるとの職業倫理に立脚し、業界で孤立してもブレないデスク・記者に彼らのプロの仕事ぶりを信頼して内部情報>>続きを読む

いつか輝いていた彼女は(2018年製作の映画)

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少女達の仲良しさと嫉妬のシームレスな形を各々に丁寧に描き恐ろしい。本人に黙ってオーディションに応募しながら審査通過書は破り捨てるシーンに至ってはホラー(根矢涼香さんは、そこが可愛いと。)。そう、加藤綾>>続きを読む

彼女はひとり(2018年製作の映画)

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映画「彼女はひとり」@ちば映画祭。当初は訳分からず苛立たせるだけのヒロインだが、少しずつ背景・想いが明らかになると共に福永朱梨の演技に陰が差し始め、全ての点を結んだ瞬間慟哭する彼女の落差ある演技・伏線>>続きを読む

恋はストーク(2014年製作の映画)

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映画「恋はストーク」@ちば映画祭。恋人に会うべく浮き立つヒロインが、異様に早口な独白に不穏さが漂い始め、恋人の部屋の玄関をねっとり愛撫する手付きと目付きとに危険を覚え(ドアへの手と腕とが服を変えつつ上>>続きを読む

ファーストアルバム(2016年製作の映画)

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映画「ファーストアルバム」@ちば映画祭。娘の歌と家族への想いが、朧気な幼き記憶での母と家族の賞賛を支えに、切々たる歌に湧き出るシーンが圧巻(その後記憶の画が鮮明に)。石野理子の透き通り深みのある歌声。>>続きを読む

君は月夜に光り輝く(2019年製作の映画)

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初見の永野芽郁の眼の色や熱の表情が素晴らしかった。人物像や登場の必然性の描写が淡白に過ぎ(例:香山や主人公姉)、松本穂香や今田美桜の演技が勿体なかった。ただ、病で光るのではなく生命を燃やして身体を輝か>>続きを読む

きばいやんせ!私(2019年製作の映画)

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自分と人と伝統との関わり方を正面から問う。歩くことで見える人々の想い(家族の写真を抱き鉾の祓いを受ける住民)。改革派の若手・反対派の長老の若き姿・女人禁制を超えるヒロイン(夏帆の目の色の変化が見事)と>>続きを読む

空の瞳とカタツムリ(2018年製作の映画)

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時に抽象的な台詞を空回りさせず身体の奥から放ち観客をヒリヒリさせる主演2人の力量(例:ホテルのベッド上の中神円・教授室で頑として無言で目合う縄田かのん)。鏡一の傷=肉体的痛みへの自らの精神的痛みの共鳴>>続きを読む

雪の華(2018年製作の映画)

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主人公2人双方の弱さと強さを丁寧に伏線を張り回収して描く。脚本が岡田惠和と知り納得。ガラス工房で恋人を微笑みながら見つめる中条あやみの目が一瞬で冥くなり、帰ってきたホテルの部屋で床に座り込み別室の彼が>>続きを読む

翔んで埼玉(2018年製作の映画)

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映画「翔んで埼玉」。埼玉をはじめとする地域ディスの連続に爆笑が止まらないが、優れて政論的時論的。恣意的な基準での優劣ではなく普遍性に根付いた誇りに基づく草莽崛起と誇りを共有することでの敵からライバルへ>>続きを読む

BACK STREET GIRLS -ゴクドルズ-(2019年製作の映画)

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快作。男の中の男を目指していたヤクザが女性アイドルになりアイデンティティに迷った時女の中の女のトップアイドルに凛とした姿勢に教えられ”人”と成る。アイドル役女優陣の男にしか見えない演技・トイレの鏡と刑>>続きを読む

LAPSE(2018年製作の映画)

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「未来に抗え。」がテーマの尖った作品。クローンと差別・AIによる尊厳死(!)・家庭と教育という環境と自由意志。ナチスの優生思想を背景に置いた物語に引き込まれる。しかし、抗えられたのか?全3話とも握手等>>続きを読む

二階堂家物語(2019年製作の映画)

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映画「二階堂家物語」。誰もが解放を望みながら囚われ続ける「家」を象徴する如く執拗に揺らぐ行灯の恐ろしさ(特にラスト)。父娘双方の心身に食い込んでいた「家」(秘書への冷淡化・恋人の指摘)。「家」を受け入>>続きを読む

劇場版 Fate/stay night Heaven's Feel II. lost butterfly(2019年製作の映画)

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映画「劇場版『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』Ⅱ.lost butterfly」。原作と屹立する・シリーズ映像化中最高傑作。目の動き等の表情・仕草と背景とが連動した色使>>続きを読む

歯まん(2015年製作の映画)

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映画「歯まん」@アップリンク渋谷。コンプレックスに苦しむ者が受容されて解放される物語。エンドロールの歓喜と哀しみに救いはないが、生き抜く意思に希望が。祐輔の遥香との繋がりへの姿勢がシーン切替で逆転した>>続きを読む

愛唄 ―約束のナクヒト―(2019年製作の映画)

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映画「愛唄」。劇中の野宮透の台詞のとおり、清原果耶の演技からは言葉と感情とが伝わってくる。病院の屋上で上空の飛行機を洗濯物を払いのけ追いかけ柵に遮られるシーン・母に告白し泣き崩れる透の背中へのタップの>>続きを読む

デイアンドナイト(2019年製作の映画)

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映画「デイアンドナイト」。凄い。昼と夜・白と黒・光と闇の対比が動きと音楽に連動して反復する高揚感を経たタイトルシーン・変わらぬ風車と波・仇と獣に墜ちかけた明石(阿部進之介)とが共に重油まみれに・その彼>>続きを読む

教誨師(2018年製作の映画)

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映画「教誨師」。死刑囚を教誨するはずの牧師が逆に自らの人生と信仰を問われていく。光背の如き照明とクロースアップ。牧師が神を物語るのではなく、自分が死刑囚の側に立つ・失格な聖職者と断言した瞬間、逆説的に>>続きを読む

こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話(2018年製作の映画)

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映画「こんな夜更けにバナナかよ」。高畑充希の演技を絶賛する同僚に勧められ鑑賞。確かに良き。鹿野と田中がコインの表裏。違いは人に正面から向き合う勇気の有無。無い人は脱落し有る人はファミリーに。大泉洋や高>>続きを読む

ニセコイ(2018年製作の映画)

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映画「ニセコイ」。割り切って腹を抱えながら観るべき映画。ただ、劇中劇「ロミオとジュリエット」(!)で中条あゆみが結婚の誓いの至福な直後池間夏海と視線が合い表情が窪むシーンの見事さと階段を降りていく中条>>続きを読む

温泉しかばね芸者(2017年製作の映画)

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映画「温泉しかばね芸者」。冴えない脚本家が自らの台本で眠りから起こしてしまった芸者に逆にとどめを刺されるシーンは、何故か笑いが湧いたが、クリエイターとして幸せな死に顔に映った。監督は韓国の映画祭で日本>>続きを読む

共犯者たち(2017年製作の映画)

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映画「共犯者たち」。保守政権・経営陣の露骨な報道の弾圧介入に呆然・歴史感覚の欠如に唖然。最後であれ職業倫理に忠実たらんとする記者たち。狂人呼ばわりに耐えられるかの問いに咽ぶ記者と連帯する仲間のシュプレ>>続きを読む