ウシュアイア

N・H・Kにようこそ!のウシュアイアのレビュー・感想・評価

N・H・Kにようこそ!(2006年製作のアニメ)
4.2
日本ひきこもり協会(Nihon Hikikomori Kyokai)略してN・H・Kということで、北海道出身で大学を中退して東京で一人暮らしでひきこもりをしている青年佐藤達広のお話。ひきこもりの話と言っても、今流行りのトラックにはねられて異世界に転生したり召喚されたりする話ではない。ましてや推される六つ子の話でもない。

ストーリー上に一切のファンタジー要素はなく、ひたすらに現実に近い世界での話である。主人公がひきこもりの生活を続けて4年目のある日から話は始まり、新興宗教の勧誘、自殺オフ会(掲示板サイトで知り合った者同士が集まって集団自殺をしようとするもの)、ネットゲーム廃人化、マルチ商法への勧誘、共依存といった現代社会(当時)の闇を反映したトラブルに次から次へと巻き込まれて徹底的に向き合わされてしまう。

そんな主人公佐藤に手を差し伸べるのは、新興宗教の勧誘に遭った際に知り合った謎の美少女・岬(実は曲者だということはすぐに分かる)と同郷の後輩でゲーム制作専門学校に通うアニオタの山崎。二人の手を借りながら佐藤はひきこもり脱出に向けて成長していくのかと思いきや・・・という展開である。

ひきこもりやそれに近い経験がある人にとっては身につまされるようで、鬱アニメとか評されることがあるが、とはいえ、ひきこもりという重いテーマを笑いを混ぜながら暗くなり過ぎないように描いて、ちょっとは前向きな気持ちになれる教育的、啓蒙的な作品に仕上がっている。

ヒロインは岬だが、なんだかんだ言って佐藤の精神的支えになっていたのは岬よりも山崎であろう。序盤は『四畳半神話大系』の小津のような役回りかと思いきや、とんでもない。ラスト近くで山崎と別れることになるが、山崎との友情が本当にアツく、このまま山崎と暮らしていたらひきこもりから脱出できたのではとも思えるほど。

山﨑役の阪口大助さんは本当に名演。一人で全部持って行った感じだ。

あと、作中の山崎が大音量で流し、いつの間にか佐藤の着メロになっているアニソン『ふしぎ・プルプル・プルリン・リン! 』の中毒性が絶妙と、細かいところまでよくできている。

ネタバレ感想はコメント欄にて。
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