ウシュアイア

宇宙兄弟のウシュアイアのレビュー・感想・評価

宇宙兄弟(2012年製作のアニメ)
4.6
2025年、南波日々人は幼いころからの夢をかなえて宇宙飛行士になり、エンジニアとして働いていた兄・六太は些細なことで無職となったのを機に、弟とともに宇宙飛行士になって兄弟で月面に立つという幼い頃の約束を思い出し、宇宙飛行士を目指すという話から始まる兄弟の絆を描いたヒューマンドラマ。

GYAOでの全99話週3話ペースでの配信で完走。

兄弟で宇宙飛行士を目指すというと何だか荒唐無稽のようだが、スポーツの世界でも兄弟で金メダルを取った方もいることを考えれば、そんな偉業を成し遂げる兄弟も出てきてもおかしくないのではない。現実世界では実現していないが、どんな兄弟だったら兄弟で偉業を成し遂げられるだろうか、ということを突き詰めて生み出されたのがこの作品。

同じ環境で生まれ育ち同じ夢に向かって進むものの、なかなか二人そろって大成することは難しい。ましてや自分より先に生まれた弟に先を越された兄の立場の心中は複雑だろう。(実際は兄の苦労を見ている弟の方が有利だったりするが。)そんな中でも、主人公の六太は大人でありながらも自分の夢に対して正直な気持ちで、一方で大人であるがゆえに嫉妬を交えた複雑な感情を抱く先行する弟のこともリスペクトしつつフォローし、自分のアドバンテージにして前に進む姿はまさに大人の生き方のあるべき姿のような気がする。

本作は主人公六太・日々人兄弟だけでなく、先輩宇宙飛行士のブライアン・エディ兄弟や六太の同期の新田零次の兄弟を始めとする家族関係から、様々な人間模様が描かれる。

JAXAの宇宙飛行士選考試験や月面ミッションメンバーの選考では、情熱をもちながらも「選ばれなかった人たち」の背景からその後の生きざままで描かれている。宇宙飛行士でなくても、多くの人は「選ばれない」という経験をするので、自分が選ばれなくてもチャレンジする意義や選ばれなかった後の生き方というのは非常に参考になる。

とにかく、原作が「人生の教科書」と言われる所以がよくわかる。

本作は長期にわたる放送ということもあって、回想シーンなどが繰り返されたり、終盤は「ミスターヒビット」という劇中キャラのショートアニメが入ったりで、賞味は平均で15分~20分といったところだろう。毎週だとじれったいし、一気見するには冗長で、週3の配信を週末に観るのにちょうどよかった。

声優さんはいずれも名優揃いだが、MVPは沢城みゆきさん。宇宙飛行士になれるほどの聡明な上に愛嬌がある(宇宙飛行士には人間性も大事だから当たり前か)ヒロイン・伊東せりか(+幼少期)、六太の少年時代、愛犬アポ、六太の同期で親友ケンジの娘などの役を演じ、まさに七色の声を使い分けていた。キャラ勝負ではなく人間性の良さをだすのは難しいところだが、せりかの魅力を十二分に引き出せたのは沢城さんだからこそと言える。

原作も完結していないし、話はまだまだ続くので最後までやらないにしても第2期の制作が待たれる。

(2021/10/08 17:41 序盤視聴中)
原作は未完結で連載中とのことだが、以前より名作と名高い。時代を超えて愛される名作では、多くの人に共感をよぶ普遍的な人間の姿を描がかれている。

幼少期は「兄とは常に、弟の先を行ってなければならない。」といって、努力を惜しまない一方で要領よく立ちまわる弟に時としてずるもしながら弟の一歩先を行こうとするが、大人になるにしたがって次第に弟とは張り合うことなくなっていく。弟に先を越されても、悔しいどころかうれしくもある複雑な感情。とはいえ、さらに弟が有名人になってしまうと、「○○のお兄さん」としか認識されない寂しさ。そんなことがきっかけでまた頑張ろうと思うのがお兄ちゃんだ。一方で、年の功で一歩先を行く兄の姿(反面教師になる場合もあるが)は弟の頑張りの原動力。

ということから、いろいろな兄弟関係はあれど、本作は普遍的な兄弟関係の機微を描いた名作であることは最初の数話で分かる。

連載開始から時間が経っていることもあり、本作で描かれる2025年のテクノロジーは現実が先を行ってしまっているところもあり、登場人物の年齢に若干の違和感あり。特に六太の感性が日々人とは10歳くらいの歳の差を感じさせる。六太役の平田さんの演技は悪くないのだが、少しおっさん臭い。
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