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ホワット・イフ...?のdaiyuukiのレビュー・感想・評価

ホワット・イフ...?(2021年製作のアニメ)
4.7
マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)では初めてとなるアニメーション作品シリーズ。
『アイアンマン』(2008年)から『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019年)までのシリーズ23作品を1話ごとに1タイトルずつテーマとした1話完結形式で、実際には起こらなかった“もしもの展開”が描かれる。
なお、『ホワット・イフ?』はマーベルが1977年に刊行した『もしもスパイダーマンがファンタスティック・フォーに加わっていたら?』を皮切りに断続的に刊行している1話完結の番外編シリーズ名称であり、各話ごとに自社のコミックスのもしもの展開をテーマとしている。

第1話「もしもキャプテン・カーターがファーストアベンジャーだったら?」
ヒドラの工作員のテロリストに、スティーブ・ロジャーズが撃たれ、ペギー・カーターが超人戦士になった世界線のストーリーが描かれる。
女という理由で戦争に出してもらえないペギーが、ハワード・スタークの開発したスーツと盾で次第に認められるようになったり、半身不随になったスティーブがハワードの開発した「ヒドラ・ストンパー」でペギーと共に活躍する展開は、ジェンダーフリーとバリアフリーの合わせ技。
キャプテン・カーターとヒドラ・ストンパーが無双するシーンは、これこそマルチバースものの醍醐味という痛快なバトルシーン。
キャプテン・カーターは、強い愛国心と信念とパワフルなスーパーヒーローぶり、スティーブを一途に愛する愛情深さとジョークを忘れない女性としての魅力が合わさって、こういうスーパーヒロインが見たいと思えるスーパーヒロイン。
だが、オチはやっぱり世界線が違っても、そうなるのかと切ない後味のエピソード。

第2話「もしティチャラがスターロードになったら?」
「ガーディアン・オブ・ギャラクシー」の内容を、ティチャラを主人公にした感じ。
広い世界を見たくなったティチャラは、ヨンドゥたちラベジャーとネビュラや改心したサノスと、盗賊をやりながら世直しをしていた。
銀河系を飢えから救うため、コレクターからエンバーズ・オブ・ジェネシスを盗もうとするティチャラたちだが、壮絶な戦いが待ち受けていた。
銀河系を良くしたいティチャラのおかげで義賊になったラベジャーの擬似家族感、ティチャラとヨンドゥそしてサノスとネビュラの強い絆、「ガーディアン・オブ・ギャラクシー」のアナザーバージョンという感じの痛快スペースオペラ編。

第3話「もしも世界が最強のヒーローたちを失ったら?」
映画では、「アイアンマン2」「マイティ・ソー」「アベンジャーズ」の別の世界線の話。
ニック・フューリーが、「アベンジャーズ計画」を進める中で、候補者のトニー・スタークやソーが何者かによって殺され、ナターシャ・ロマノフとクリント・バートンが濡れ衣を着せられ、バートンも殺害される。
フューリーとナターシャは、犯人を調査するが、犯人はシールドに怨みを持つ意外な人物だった。このシリーズでは、現時点では最もサプライズの連続で、観る者の感情がジェットコースターに乗っている感じ。
フューリーとロキが、手を組む展開があったり、キャプテン・マーベルが早くも登場したり、エルス・ワールドものの懐の深さや意外性が楽しめるエピソード。

第4話「もしもドクター・ストレンジが手の代わりに恋人を失ったら?」
今回は、「ドクター・ストレンジ」のアナザーストーリー。
受賞式に参加する途中での事故で、クリスティーンを亡くしたスティーヴン・ストレンジは、魔術で恋人を取り戻そうとするが、それは神聖時間軸の絶対点を変えるタブーに触れる行為で、世界は崩壊の危機に晒される。
マルチバースの世界では、良いことも悪いことも起きる。善意が、裏目に出る悪夢が描かれるエピソード。こういうストレンジの傲慢さと善意が裏目に出るエピソードを見ると、スパイダーマンの新作が、不安になります。
ストレンジ先生に、一言。
「ストレンジ先生、それはあかんやつや😅」

第5話「もしもゾンビが出たら?」
ハルクことブルース・バナーが、サノスの来襲を知らせるために地球に戻る途中、別の世界線に迷い込んでしまう。
そこでは、アイアンマンたちアベンジャーズの大半がゾンビになってしまった悲惨な世界になっていた。
その原因は、ハンク・ピム博士が量子世界に取り残された妻ジャネットを取り戻そうとしたことだった。
シャロン・カーターやオコエやバッキー・バーンズやスパイダーマンと共に、ブルース・バナーは、ゾンビ化するウィルス性脳炎の特効薬の研究しているリーハイ基地に向かう。
元ネタは、「マーベル・ゾンビーズ」。
キャップvsバッキー戦やハルクvsワンダ戦などの夢のバトルが、見られる。
量子世界に蔓延るウィルス性脳炎に感染したジャネットを連れ帰ったハンク・ピム博士やゾンビを遠ざけるマインドストーンなどがあるのに仲間たちを餌にするヴィジョンのように、愛ゆえの独善的な人間の悲しさが切ない。ラストのオチは、怖すぎる。

第6話「もしもキルモンガーがトニー・スタークを救ったら?」
今回は、「アイアンマン」「ブラックパンサー」のアナザーストーリー。
アフガンで「テン・リングス」の暗殺部隊に殺されかけたトニー・スタークは、キルモンガーが命を救われる。
テン・リングスの背後に社長の座を狙ったオバイア・ステインがいたことを看破したキルモンガーは、トニーの信頼を得て、テロリストから国土を守るためにドローン兵器をトニーと開発する。
ドローン兵器の材料にヴィブラニウムを手に入れるため、武器商人のユリシーズ・クロウと取り引きするが、それは罠だった。
アメリカとワカンダをかち合わせるキルモンガーの策略は、アメリカとタリバンとの闘争という現実が反映されていて怖すぎる。
キルモンガーの陰謀に立ち向かうヒーローの役割を果たすことになるのが、ペッパーとシュリであるのが今どきな感じ。

第7話「もしもソーがひとりっ子だったら?」
今回は、「マイティ・ソー」のアナザーストーリー。
ロキが実の父の下で「氷の王子」として育ち、ソーはオーディンのひとりっ子として甘やかされて育ったソーは、よその惑星に「文化交流」を名目に遊びに行っては放蕩三昧の挙句に惑星を滅ぼしかけるなどパーティー好きな王子になっていた。
母のフリッガが、女子会に行っている間に、ソーはミッドガルドつまり地球にやって来てパーティー三昧。地球がめちゃくちゃになりそうになり、シールドはキャプテン・マーベルをソーのところへ向かわせて、ソーを地球から追い返そうとする。
これも、「悲劇がヒーローを作る」の例。
ロキがいたから、ソーはマイティ・ソーになった。
パーティー好きな兄弟の仲良しぶりやナンパでパリピなソーの憎めないお坊ちゃんぶりが、ほっこり笑える。
ソーvsキャプテン・マーベルのパワー対決も楽しめる。
「パーティー好きな息子を叱るなら、母親に頼め」

第8話「もしもウルトロンが勝ったら?」
トニー・スタークが、世界平和のために作り出したウルトロンは、世界平和のために全生命を抹殺しようとする。
ヴィジョンと融合し完全生命体となったウルトロンには、アベンジャーズもガーディアン・オブ・ギャラクシーも敵わない。
生き残ったブラック・ウィドゥとホークアイは、ウルトロン打倒の秘策を実行するためロシアに向かう。
一方ウルトロンは、サノスを倒してインフィニティ・ストーンと融合してさらなる完全体になろうとする。
今回は、「アベンジャーズ・エイジ・オブ・ウルトロン」のアナザーストーリー。
ウルトロンとヴィジョンが融合し、さらにインフィニティ・ストーンと融合する最悪の展開。
ちゃんとオチが、ついていないのは、シーズン2への伏線か?

第9話にしてシーズン1の最終話「もしもウォッチャーが誓いを破ったら?」
前話でウォッチャーをも脅かす存在になったウルトロンに、マルチバース多次元宇宙を破壊されるかもしれない危機にさらされたウォッチャーは、「多次元宇宙に干渉しない」という誓いを破って、ドクター・ストレンジと多次元宇宙を探して、ウルトロンに対抗すべく「ガーディアン・オブ・マルチバース」に加入すべきスーパーヒーローを探し始める。
今回は、「キャプテン・アメリカ・ウィンターソルジャー」のアナザーストーリーで、今までのエピソードにケリをつけるシーズン1完結編。
キャプテン・カーター、スターロード・ティチャラ、キルモンガー、ソー・オーディンソン、ガモーラ、ドクター・ストレンジが、完全体となったウルトロンと戦うクライマックスのバトルは、魔法などスーパーパワー全開なポータルを駆使しての戦略などなんでもありのバトルで、まさにカオス。
インフィニティ・クラッシャーなどの新しいガジェットやスーパーヒーロー同士のコンビ技も楽しめるし、ブラック・ウィドウなどのこのシリーズならではの結末が、マーベル・シネマティック・ユニバースの作品群のストーリーを踏まえたひねったオチになっていて、今までのエピソードもマーベル映画の内容を踏まえたひねった展開になっていて、このシリーズがどのように「ドクター・ストレンジ」などの新作に影響するか考察したり妄想するのも楽しいアメコミ・アニメシリーズ。
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