ウシュアイア

昭和元禄落語心中のウシュアイアのレビュー・感想・評価

昭和元禄落語心中(2016年製作のアニメ)
4.0
落語家・八代目有楽亭八雲の一代記で、無二の親友でライバルであった二代目・有楽亭助六を不幸な事故で亡くし、孤高の落語家として弟子も取らずに厭世的に生きているところに、弟子入り希望の与太郎が押しかけてくる、というところから話は始まり、第1シーズンは主に八雲の菊比古時代の愛憎劇の昔語り。

原作既読、ドラマ視聴済みで、アニメの特筆すべきところが、菊比古~八雲役の石田彰さんの演技。よく言われることだが、落語シーンは本当の噺家さんが演じているかのようなお芝居で、菊比古のもつ艶っぽい話し方はもちろん、若い時代から老成までの演じ分けができており、石田さんの演技に納得と驚嘆させられた。

また、みよ吉役の林原めぐみさん、与太郎役の関智一さんもイメージそのままであった。

ただ、山寺宏一さんは石田さん同様落語のシーンは本当の噺家さんのようであったことには間違いないのだが、山寺さんの声に年季が入っていて、正直なところ若い助六のイメージと微妙に合っていなかったような気がする。

アニメはやはり原作、ドラマとは話の印象が少し違う。原作は夏目漱石の「こころ」のように時代の変化との向き合い方、自分が果たせなかった想いを若い世代に託すといった部分を強く感じ、ドラマ版は助六との友情が強調されているように感じたが、アニメ版では若い時代の菊比古は自分の居場所を得るために落語に打ち込んでおり、『3月のライオン』の桐山零のようで、菊比古の強い孤独の側面を強く感じた。

全体的に話が重苦しいのと、落語のシーンを魅せるために尺を多くとっているため、テンポが遅いので、動画配信などで一気見しようとするとしんどいかもしれない。
ウシュアイア

ウシュアイア