うっちー

スモール・アックスのうっちーのレビュー・感想・評価

スモール・アックス(2020年製作のドラマ)
4.5
 映画館でスターexのCMを観てがぜん観たくなった作品。ボリューム的にも内容としても充分映画扱いされ、評価されるべき作品だと思った。なんというか、声高でない、静かな怒りと、それをただ諦めや絶望にのみ向かわせないクレバーなパワーを感じた。この監督凄い。

 5話構成で、それぞれ状況は異なるけれど、イギリスはロンドンの、カリブ海周辺の国々の移民たちの話。もちろん黒人たち。日本だとブラックの人たちの問題は主にアメリカで起こっているように感じられ、ヨーロッパ、中でもイギリスの状態はあまり知られていない気がする。でも確かにロンドンにはブラックの人たちもかなりいて、実際に私が行った際にも地下鉄などでたくさんお見かけした。なんとなく白人たちより身なりがきちっとしていて、靴なんかもちゃんとしたものを履いているご婦人をたくさん見たので、特に5話の『エデュケーション』に出てくるお母さんや教育改革を進めようとする活動家の方たちの凛とした姿はその20年以上前の私の記憶とかなり重なった。

 どの話も甲乙付け難く良いけれど、特に印象的だったのは2話と5話。2話はとにかく、ロンドンというとレゲエのイメージも強くある中で最高に楽しめた。民家を使ったクラブ。デカいサウンドシステム。とにかくそれだけでかなりワクワクした。話も若い人たちの一瞬を切り取ったものだけど、あの鬱屈した情熱がスパークするように踊りまくる若者たちの姿が圧倒的だった💦 汗が見えそうな。
 5話は、本当に一番大事なテーマだと思う。日本の学校の先生たちや中学生以上くらいの学生も観たら良いと思う。また、他人事ではなく、こういうことは日本にもあるはず、と思う。

 なんとなく館に行きたい作品があまりなくて、じっくり家で観ていた連休だけど、これはとてもよかった。また、メイキングで、ジョン・ボイエガほか出演者やスタッフがいかに監督を信頼しているかが伝わってきて、監督自身や制作体制の良さにも感動。よい鑑賞体験だった。
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