碧

わげもん~長崎通訳異聞~の碧のレビュー・感想・評価

わげもん~長崎通訳異聞~(2022年製作のドラマ)
3.5
ペリー来航の4年前。オランダと清とのみ交易が許された唯一の土地、長崎の出島や唐人屋敷を含む地域を舞台にした物語。

その時代と場所の特殊性が面白いなあと。
もちろん面白いと感じるのはフィクションで今の時代から俯瞰してるからであって、実際にその時代に生きる一般庶民だったら、ただ毎日を必死に生きてるだけだろうけど。

このドラマは、色々な観点からその時代・場所を描いてあって、なかなか面白かった。
単に日本語vs外国語というだけでなく、江戸の言葉、長崎の言葉、という重層性があったのも良かった。

NHKはお金を持っているのだから、これからも頑張って時代劇を作っていってほしい。

登場人物たちもそれぞれカラーが違って魅力的。

しかし、最後のほうの展開は、ベテラン俳優さんたちの大仰な演技に疲れてしまった。
俳優さんたちが悪いというよりは、予算のなさ?を俳優さんたちの演技で埋めようとしたのかなあ…?
何かもっと上手い決着の付け方はなかったかなあ。

素朴な疑問として、当時の中国・清は満洲族の国なので、唐人屋敷の中国人たちは、満州語を話していたのではないのか?ということ。
ドラマの中では現代の中国語(漢民族の言葉)と同じ言葉が話されていたので、疑問だった。ドラマの便宜上、そうしていたのかな。
それとも…? 支配層の民族が変わるごとに言語の問題はどうなっていたのか、イメージがつかなくていつも不思議に思うところ。

→調べました。清の時代になっても、一部の漢人以外は満州語を学ぶことが許されていなかった為、日本との交流には引き続き漢語が使われていた。
また、満州族は、清の時代に漢文化への同化が進み、清末期には満洲族もほとんどが漢語を話すようになった。
つまり、ドラマで漢語が話されているのは、史実に反することではないんですね。スッキリした笑





【ネタバレ】





ラストの展開は、ドラマ性を重視して、ナレーションで流れを中断させたりしない為に、説明不足だったのかも。

当時、水と食糧を求める外国の捕鯨船の寄港が後を立たず、問題も起こったので、幕府は異国船打払令を出して、外国船は問答無用に砲撃して追い返すことにしてたんですね。
そんな中、マカオで保護されていた日本人漂流民を乗せたアメリカ船を、砲撃して追い返すという事件が起きた(モリソン号事件)。(これは長崎ではなく、浦賀での話)
神頭さんのエピソードは、この事件から来ていたんですね。

実際のモリソン号事件において、日本側はモリソン号を商船ではなく軍艦と誤認していて、しかも日本人漂流民が乗っているとは知らなかったらしい(Wikipedia)。それが本当なら、幕府側にも同情できるような。
そもそも異国の船を打ち払うことそのものに賛否両論があるけれど。

でも、漂流民の立場からしたら、日本人なのに国に捨てられた、と感じるよなあ…。だからこそ余計に、自分が日本人であることを利用して自国に損害を与えるような行動を取るというのも、心理として確かに理解できる。

壮多の父親の事件に関しては、地図の翻訳をした実行犯は、当時は子供だったとはいえ、実行犯には変わりないので、何もないまま終わるのは納得いかない。
お咎めなしの結末にするにしても、壮多との何らかの対話をして決着を付けて欲しかった。

「地図を渡しただけで島流し」と えま先生は言ってたけれど、いやいや、地図なんて、敵(になりうる相手)に渡したら一番あかんものですえ…
碧