いかえもん

模仿犯のいかえもんのレビュー・感想・評価

模仿犯(2023年製作のドラマ)
4.2
宮部みゆきの20数年前の原作を台湾でドラマ化。
私、宮部みゆきファンですし、特にこの模倣犯は宮部さんの作品の中でも傑作だと思っています。これすごく長い小説なので、途中でタイトルの模倣犯ってどういう意味なのかなぁ?ってなります。それで、最後まで読んだときにタイトルの意味が分かるところで、心の底からうわー!そういうことかー!って思ったんですよね。なんというすごい作家さんなんだろうと驚きました。緻密に書かれた人物や背景描写が素晴らしく、主役のために脇役がいるんじゃなくて、一人一人のキャラクターがしっかりと物語の中に生きている。そこが、宮部作品のいいところであり、だからこそ映像化は非常に難しい。日本での映画版は、私は観てないのだけど、非常に評判悪くて宮部さんもお怒りだったというのは有名なお話ですよね。その後テレ東で作られた中谷美紀主演の前後編の4時間ドラマは、私も観ましたが、原作に忠実でよかったと思います。

で、今回のドラマは約1時間×10話で構成されているのもあって、非常に丁寧に描かれているので、さらにドラマの中に深く入り込んで観ることができます。まあ、それだけに逆に重くて怖くて辛い気分も存分に味わうことになるけどね。さらに、宮部作品のいいところは、こういうどぎつい犯罪を描写しながらも、その中に、巻き込まれた人たちの心の優しさや思いやりある心の繋がりを巧みに織り込んでいくので、恐ろしい話でありながら、じんわりと温かい気持ちになったり、どう生きるかということについて考えさせられます。その辺についても、このドラマはしっかりと作りこまれていて、ただ怖いだけじゃない、人間ドラマとしての完成度も高かったと思います。

脚本が非常に上手くできていて、原作は登場人物が非常に多いのだけど、それを上手く一人の人に統合していたり、端折ることで、すっきりとまとめていますし、設定も若干原作とは異なっているけれど、違和感はない。私のように原作既読の人も、あの人の役はこの人なんだーとか、あの設定はこういう形になっているんだなという風に観ることができてそこも楽しめた。そんな風に設定は変わっているにもかかわらず、物語の根幹の部分はがっちり残っていて、メッセージも宮部さんの言いたかったことがきちんと描かれていたと思う。

血なまぐさいし、残虐シーンもあるので、それが苦手な人は難しいかもですが、Netflixに入っている方はぜひ見てみて下さい。で、ドラマ見た人はぜひ原作も手に取ってほしいです。色んな所でドラマとは設定が違っているので、二度楽しめると思います。