いろどり

東京裁判のいろどりのレビュー・感想・評価

東京裁判(2016年製作のドラマ)
4.0
これはU-NEXTだとポイント消費の作品だったので無料配信しているネトフリで解約前に見ておこうと思っていたもの。NHK制作の4話構成のドラマ。2日に分けて見ようと思っていたけど面白くて一気に見てしまった。1話終わるごとに当時の背景やエピソードなどの解説が入る大河ドラマスタイルだったのは見やすいポイントだった。

東條英機を筆頭に日本軍の幹部たちを裁いた東京裁判(極東国際軍事裁判)の様子を、NHKが8年間の取材により、日本側ではなく、戦勝国11人の判事の側から描いたドラマ。

いやあ、NHK良い仕事してる。小林正樹監督の「東京裁判」を探していて偶然見つけたものだけど、これは見て良かったと思える良質な作品だった。

国の代表であり、戦勝国の代表としての責務と、判事としての信念の間で激しく揺れ動くさまが実に見ごたえのあるヒューマンドラマになっている。

争点は平和に対する罪。これは侵略戦争を共謀し実行したかということ。もちろん日本は侵略したわけだけど、この国際法が制定されたのは戦後であり(事後法)、それ以前の罪を裁いて良いのか、というところで信念のある判事は悩む。

しかし、東京裁判の前に行われたナチスのニュルンベルク裁判ではナチスを裁いてしまっているので、ここで裁かないと面目を保てない。

公人として自国への忖度や戦勝国としての対面を保つことへの向き合い方が各国さまざまで、直接日本の被害を受けている中国が正義と報復を混合しないように抑えめなのに対し、感情的なフィリピンが興味深かった。また、熱い信念を貫くインドのパル判事に興味を持った。

テーマ曲が、坂本龍一のラストエンペラーを彷彿とさせる重厚な旋律で、歴史の重みを感じさせる。

ハイライトは第3話の東條英機の証言の実際の映像。このドラマでは実際の東京裁判の映像をカラーにしてふんだんに使用しているのが見どころの一つ。昭和天皇の戦争責任に話が及ぶとき、必死にかばう姿と、絞首刑と言われたあとちゃんと会釈してその場を去るのが印象的だった。

半年といわれた裁判がなぜ2年半の歳月を要したのか。そこには人として向き合った判事の苦悩や信念、配慮があったのだ。これは非常に勉強になる面白いドラマだった。
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