キラリ

神の子はつぶやくのキラリのレビュー・感想・評価

神の子はつぶやく(2023年製作のドラマ)
4.2
“神様を信じているか、信じていないかで人間を区別する世界”

「とんでもない作品を観てしまった・・・」というのが、率直な感想。民放ドラマでは実現不可能な内容だろうし、きっとたくさんの当事者に取材を重ねて、徹底的にリアリティを追求して仕上がった作品なんだろうな。

宗教2世や宗教そのものを扱う作品はこれまでも何度か観てきたけど、ここまで演出と脚本と役者の演技のレベルが高く、見応え十分な作品は他になかったかもしれない。途中SMバーが登場した時は、「なにごと?!」と驚いたし、気まずいにも程があるくらい長々と緊縛シーンを地上波で流すNHKも攻めすぎだけど。ただ、宗教2世として信仰と家族の呪縛から逃れたはずだった長女が、ある日緊縛ショーを鑑賞したことがきっかけに抑えてきた感情がこみ上げてきてあふれ出すシーンや最終的に自分も縛ってもらい緊縛の痕が消えずに残っている場面は宗教2世が抱える心の傷や背負っていかなければならない物のメタファーのようで演出がとにかく見事だったと思う。とはいえ、私は当事者じゃないからこのドラマに対して好き勝手言えるし、評価してしまうのであって、非常にセンシティブな題材なだけに軽はずみに「おすすめなので観てください」と言えないのも本音としてある。当事者の苦悩や葛藤の現実はこんなもんじゃないだろうし、当事者の方々はこの作品に対してどんな感想を持つのだろう、、、と考えるだけで苦しくなる。

人生に絶望した母親が、切羽詰まって信仰に傾倒していく様が、田中麗奈のやつれきった姿や卓越した演技力も相まって、観ているだけでものすごく辛い。とにかく、辛い。

全体とおして、適材適所なキャスティングが素晴らしく、特に娘役を演じた河合優実と根本真陽の迫真の演技にただひたすら圧倒されたので、これからのさらなるご活躍に目が離せなくなりそう。
キラリ

キラリ