テイラー・シェリダン制作、脚本ってことで4.0台を期待するが、期待通りの一気見作品だった。彼の作品は人の心の儚さや虚しさ、そして執念や因縁を巧みに描き、アクションシーンの緊張感もハンパない。
人種や地域格差やポリコレ的な面にフォーカスする作品は多く、多少その描き方にしつこさも感じるが、単なるアクションにとどまらず、感動作に仕上げてくる。心の闇やトラウマを描くのが実にうまいのだ。
本作はCIAもからんだ特殊工作チームが中東の石油王を暗殺ターゲットに設定、その娘の結婚式に海兵隊の女性兵士を潜入工作員に送り込む話だ。工作員役の顔つきはどことなくシェリダン作品『ボーダーライン』のエミリー・ブラントとかぶる。
潜入工作員と石油王の娘は、遊び仲間として付き合い始めるが、次第に友情でおさまらず、性的な一線を越えていく。2人とも今まで真の友人をつくったこともなく、他者と愛情を築いた経験すらなかった。
いわゆる寂しい者同士が極限状況の中で心身とも深く結びついていく。このあたりの描き方は現実的にありえそうもないものの、孤独な人間同士であるならば、「そんな関係になることがあるかもしれない」と思わせる演出だった。
工作員だけでなく、本作は女優の活躍がメインだ。
現場指揮官のゾーイ・サルダナは家庭に問題を抱えながら重要なミッションを遂行しなくてはならないが、その責任感と母親の役割との間で悩む姿はリアリティがあった。悪人を殺害したあとに自宅に帰り、夫に顔についた血のりを指摘されるシーンもすごかった。
ラスポス的存在感のニコール・キッドマンは、制作も兼ねているせいか、気合いが入っており、演技の眼力やセリフの言い回しも迫力がある。
シリーズ化できそうなストーリーだ。