●12話
「私はキャッチボールをしてみたいです。あなたと。ボールは投げました。それじゃ。」
「僕は今まで他人の住む家ばかりを設計してきました。でも自分や…自分の…大事に思ってる人の家を設計するのは、どうしてもできなかった。明るくて、開放的で、みんなが遊びに来るような、そんな家で、自分が暮らしてるのがなかなかイメージできなくて」
「ちょっと待ってください。今、自分が暮らすって言いました?」
「ええ、言いました」
「僕はずっと結婚なんかしないって思ってきましたけどね。めんどくさそうだしメリットなんかないじゃないですか。一人の方がいいって。でも、あなたと出会って、話し相手がいつもそばにいるのも、いいのかなって。要するに、僕は、あなたが好きなんじゃないかな。だめですか?僕じゃ」
「いいかもしれません」
「いい?いいでしょ?ああ…うれしいなあ、やあ、結果的には結婚できないんですけどね」
「えっ?今なんて言いました?」