Mickey

青い鳥のMickeyのネタバレレビュー・内容・結末

青い鳥(1997年製作のドラマ)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

理森の前に、かほりや誌織が現れなければ、彼の人生は、ここまで変わってしまうことは無かったのではないだろうか。
客観的、そして個人的にみると、彼は、彼自身を本気で愛する女性たちに身を捧げ、10年という貴重な時間を失った哀れな男のように感じてしまった。

しかし、理森の行動や表情に着眼すると、彼も彼女たちを本気で愛し、愛しているが故に、自分の人生よりも、彼女たちを守ることを最優先に考えるという強い信念と悟りが伺え、心が痛くなった。
また、かほりの実の夫である綿貫も、自己中心的な嫌なヤツではあるのだが、かほりと誌織を彼なりに愛してはいて、妻の不倫相手である理森を恨み泳がせておきながら、最後は庇おうとする姿は、忘れられなかった。
不倫・駆け落ちドラマはあんまり好きではないけれど、この作品は「恋愛」というものの美しさと儚さ、何故か正直に生きられない人間の哀れさ、そしてカゴの中の青い鳥、中原中也の言葉、南十字星といった文学的情緒を感じさせてくれた作品であった。

余談だけど、個人的名シーン。

①かほりと2人きりで駆け落ちしようとする場面で、理森がこれから先1人になってしまう誌織の姿を想像し、電車が行くギリギリの場面で、ホームにある鳥籠の鳥たちと遊ぶ誌織を急いで抱え込み3人で逃げようと決心するシーン。
瞬時に葛藤しながらも、自分の意思を貫く理森の人柄が深く読み取れた。

②仮釈放の理森は、保護地区である下関駅で、迎えにきた美紀子を前にしながらも、母の遺骨を持って、鹿児島に家族旅行をしようとする中学3年生の誌織を置いてはいけないと、一度ホームへ降りるが、電車の扉が閉じようとした時、電車に飛び乗るシーン。
ここで鹿児島まで行ってしまうと、もう一度刑務所へ戻らなければいけないという運命の分かれ道であった理森と、秘そかに彼を愛し、彼を守るために遠い下関まで来た美紀子が、彼と再会できたのにも関わらず、彼女の想いは儚く散ってしまうという切ない場面。

③大人になった誌織が、「理森」と呼び捨てで呼ぶシーン。
幼き頃から、父的存在として心から受け入れてきたのにも関わらず、「お父さん」や「理森さん」とは呼ばずに、「駅長さん」と呼び続けてきた誌織。
それは、彼女が初めて彼に会った時(初めて母以外に心を許せる存在が生まれた瞬間、または、恋愛感情が芽生えた瞬間)、彼は清澄駅の駅員姿であり(実際には駅長ではない)、それは永遠に、彼女の中で忘れたくない姿だったからなのではないだろうか。
だけど、成人を迎えた誌織にとって理森は、父娘の関係や、心許せる友人関係ではなく、恋愛的な男女へと変化していたことが明白に理解できたシーンでもあり、涙がこぼれた。
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