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波の塔のnorisのレビュー・感想・評価

波の塔(2006年製作のドラマ)
2.5
今見直したら本作は2006年の麻生祐未版(下記参照)。私が見た羽田美智子版は登録されていないようなので許してー。



清張が「女性自身」の部数を急増させたロマンス物で、1960年に書籍化されるや、本をバッグに忍ばせて青木ヶ原で自殺する女性が増えたといういわくつきの小説である。深大寺そばを有名にした作としても知られる。

冒頭に取ってつけたような殺人があるだけで、全編、沢村一樹と羽田美智子の奥ゆかしい不倫ストーリーで、上記の事情を意識して見ないと、冗漫かつ唐突で意味不明なドラマになっている(クライマックスの沢村の錯乱など)。

映画化1回、ドラマ化8回。映画は有馬稲子と津川雅彦(1960)、ドラマは池内淳子(1961)、村松秀子(1964)、桜町弘子(1970)、加賀まりこ(1973)、佐久間良子(1983)池上季実子(1991)、麻生祐未(2006)に続いて本作が羽田(2012)。お相手である沢村の二枚目ぶりは初代の津川雅彦に匹敵するかもしれない。

東京オリンピックを4年後に控えて建設ラッシュ只中の東京が舞台で、建設省汚職に暗躍する公共事業ブローカー(むちゃくちゃ怪しい鹿賀丈史)の妻が羽田、それを追う若き検事が沢村。羽田は44歳で作中年齢を大幅にオーバーしているのだが、和装も洋装も見映えが良いということになっているので、まあ適役なのだろう(私には寝巻きのようにしか見えないのだが…)。

鹿賀は佐久間美子版で検事役をやっているせいか、終盤でいい味を出している(鹿賀の演じたブローカーは山崎努が演じた)。

二人は事件と関係なく青木ヶ原で出会い(死体発見現場を検分に来た沢村はともかく、一介の人妻の羽田がそんなところにいるのは変なのだが、当時は観光地だったのだろうか)、あちこちで距離を縮めていくのだが、二人の関係を追う市川由衣(「女性自身」読者層に合わせて清張が設定したキャラクターならん)の出番が途中でなくなっており、これも意味不明になっている。

あとは、吉田羊が出ていたのと、蟹江敬三のナレーションが良かった。
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