長内那由多

マーベラス・ミセス・メイゼル シーズン4の長内那由多のレビュー・感想・評価

5.0
E1
素晴らしいオープニングショットからさすがAmazon看板番組のゴージャスなプロダクションデザイン。大物スターに対してイジり芸をかましたばかりに干されたミッジが再起を誓う。ステージに立つ者としての自尊心が備わり、俄然今後の展開に期待が高まる出足だ。

E2
女だからと牛乳も買えなければ舞台にも立たせてもらえないミッジだが、こっちの方が断然面白いだろとギラついていくのがいい。方やパパはようやく自己実現を果たし、芸術を追い求める同士、酒を酌み交わす。ひとつ屋根の下で必要なのは同じ価値観だ。

E3
急逝したブライアン・タランティナへの追悼エピソードで、スージーのキャラクターが掘り下げられている。アレックス・ボースタイン、名演。
一方でレニー・ブルースが再登場。ミッジの顔が蕩けているのがイイ。

E6まで。
ソフィー・レノンが再登場。舞台に立つ者だけが持つ特殊なプライドに焦点が当たり、ミッジもどんどん“らしく”なってきた。ジェーン・リンチがさすがの上手さ。毎回ふらりと現れるレニー・ブルースの奇妙なエピソードに、いよいよ晩年の影が射し始める。

完走。
女芸人の一代記になるかと思われたドラマはファイナルシーズンを目前にしてどんどん内側に向かっていく。家族各人にはもはや語るべき物語すらないように見える。プライドと実力を備えたミッジがインディーズで構わない「言いたいことを言う」と意固地になる。
彼女の才能に惚れ抜いたレニー・ブルースが言う「オレを悲しませるな」。外では『ベン・ハー』がかかっている。これが1959年で、レニー・ブルースが薬物中毒で命を落とすのが1966年。演じるルーク・カービーは過去シーズンでも後の運命を知るかのような死の影を滲ませてきたが、S4E8は特に絶品だった。

S1が終わった時にこれは凄いドラマが始まったと心の底から感動したけどS2以降、その駆動力は全く再現できていない。S4を終えて、実は僕達が思っているよりも小さく、ミニマルなドラマを目指しているのでは、と感じ始めている。
長内那由多

長内那由多