ウシュアイア

沈まぬ太陽 第一部のウシュアイアのレビュー・感想・評価

沈まぬ太陽 第一部(2016年製作のドラマ)
4.2
WOWOWで放送されていたことは知っていたが、FODで配信開始となったようで、ようやく視聴できた。

巨大企業の腐敗を描いた作品だけに映画化されるときも撮影などで苦労したことから、広告で制作費をまかなう民放でのドラマ化が難しいとされていたが、広告が少ないWOWOWだからこそ作れた作品。

映画では渡辺謙の熱演で感動作に仕上がったが、ストーリーはどうしてもダイジェストになり、主人公以外の登場人物の感情の機微がおそろかになりがちである。

第1部は、半官半民の人の命を預かる空運の巨大企業でありながら、相次ぐ路線拡充でいつ事故が起きてもおかしくない労働現場の改善をすべく、時として強硬路線も辞さない戦術をとった労働組合の委員長である主人公が、会社からの報復人事により長期の中近東~アフリカへのへき地勤務を強いられ、日本に帰任するところまで。

ドラマでは会社側の思惑ほか、へき地勤務中の家族の様子が丁寧に描かれていた。特に夫の生き方に理解を示しつつも、平穏な家庭を願う主人公の妻の感情の機微がよくわかる。夏川結衣さんの演技が素晴らしかった。

主演の上川隆也さんはほぼ無名時代に『大地の子』の主役をやっていたこともあり、山崎豊子作品二度目の主演ということで、作品への理解の深さが感じられた。ただし、主人公のライバル役の渡部篤郎は容貌が年相応ということもあり、少々違和感を覚えずにはいられなかった。

この作品は、主人公に焦点を合わせると組織(企業)と個人の葛藤という部分である程度長く同じ職場で働いた経験がある人であれば共感を覚えるだろう。ドラマでは妻の視点でも見ることができるので、家族の在り方を考えさせられたりや妻の想いへの共感や理解にもつながりやすく、映画よりもストライクゾーンが広くなっている。
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