あおき

ONE PIECE FILM REDのあおきのレビュー・感想・評価

ONE PIECE FILM RED(2022年製作の映画)
3.7
ライブ=音楽への熱狂という現実逃避をそのまま“夢のように自由な世界”と紐付けて、快楽主義に問題提起するプロット。過去のワンピ映画と比べるとダントツで脚本力を感じた!

ライブの没入感が長続きしなかったり回想入れまくったり、物語進行はとんでもなくカオスだった気はするけど、正直ナメてたぶん、俺はわりと楽しめた!

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多くの一般市民を苦しめる存在である海賊。個人的にも海賊にトラウマを抱くウタは「海賊が跋扈する時代(現世)との別離」いわば「マトリックス」のような仮想世界で不自由なく生きることを「新時代」と定義して、今回の件に至る(と思う)。
超大規模の心中としか思えないが、実際にこれまで歌(というひと時の現実逃避)で多くの人の心を救ってきた少女がその結論に至るのも無理ないかなと思う。

このウタの思想に対して、観客の賛否が割れる描写が明確にあるのが面白い!!実現するなら嬉しい…けど現実で頑張ってたこともあるし…しかしウタも悪意がある訳ではない……みたいな。
「一生幸せな夢だけ見れる機械があったらそれを脳に繋ぐか?」のような、ある種の哲学に足を突っ込んでいる。

ただこれに対して、ルフィの意志表明が無くただ単純な勧善に留まってるのがかなり勿体ない。トットムジカだか知らんけど暴れんなー!!というだけ。

今回の件はルフィの
❶「支配なんかしねェよ この世で一番自由な奴が海賊王だ」
❷「つまらねえ冒険ならおれはしねェ!!!」
などのスタンスに触れ得る。
『ウタの作り出した状況は支配か自由か?他人に与えられた自由は本当の自由なのか?』という部分の討論/説教をガッツリやって欲しかった。

トットムジカのくだりは解釈に困った、なんだその付随能力は…どうにかヴィランを設定する必要があったのだろうけども。要は「逃避して蓄積した悲壮感に直面すること」を意味するのか?

ウタの計画が崩壊したのち、エンディングでは各地のキャラが音楽を聴きながら現実を笑顔で生きている。「娯楽という現実逃避は現実ありきである」という着地をしたように思える。

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歌唱シーンのマジライブ感が最高なだけに、途中でショボい影絵ダンスが入るのが嫌。ライブとして没頭させてくれよ!あと予算ケチんな!!

冒頭にも書いたけど、回想シーン挿入が多すぎて「現在⇄回想」のテンポ感が過去1で悪かった気がする。全体的に曲で拍子を取られてるせいもあって。

あと歌詞とストーリーの連動が一切ないっぽいのも勿体無い。

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ブリュレやブルーノと言った「別次元を生成できる能力者」が揃っててキーパーソンになるのかと思いきや全然そんな事なく、見聞色で次元間が繋がれちゃいますというのもかなり無理があって残念。

あと海軍、マジでシャンクスにビビりすぎ
あおき

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