すずや

チェリまほ THE MOVIE 30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしいのすずやのレビュー・感想・評価

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何度も何度も繰り返し、「同性婚というシステムさえあれば彼らはこんな思いをしなくてすむのに」と叩きつけてくる部分は凄まじく好感度高かった。同性婚というシステムが存在していれば、きっと理不尽な転勤も、緊急時の連絡も(六角が知らなかったら本当にヤバかったよな)、そして将来設計ももっと楽になるはずなのに。『世界は僕らに気づかない』で「パートナーシップがある世界で、制度がもたらす意味」みたいなifを叩きつけられたばかりなのもきっとあるけれど、「一緒に住もう」以上の人生設計が持てない状況、本当にどうにかしたい。
安達が「理不尽に飛ばされたくないから会社に必要とされる人間になりたいんだ」って言うとこも本当に悔しくて、どうしてこの社会には同性婚がないんだろう、って繰り返し考える。
原作者がマリフォーを応援している、ってことが、やっとこの映画を観て納得ができた、と思う。

だからこそ、ここまで制度の問題に切り込めているのに、黒沢や安達のゲイアイデンティティを深く掘り下げていないのがやっぱり勿体ないし、私は納得できない。ここの足りなさのせいで、やっぱりずっと言われてきた「性別なんて関係ないお前が好きだ」の文脈から脱せてなくて、それが本当にもったいない。それが、私にとってのちぇりまほが「ハートストッパー」を超えられない理由なんじゃないか…やっぱり「ハートストッパー」のニックのアイデンティティ模索みたいな描写があってこそ、って今は思う。もしかすると、もっと時間が経ってみたら、全く違う見え方をするのかもしれないけれど…
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