垂直落下式サミング

ザ・ボディガード パーフェクト・エージェントの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

3.5
巨大な陰謀に巻き込まれた最強女ボディガードが、傲慢な男性ラッパーを警護することに。険悪な関係から次第に愛が芽生え始めるが…。
最初に出てくる女の子は、好きなラッパーにプライベートで会いに行っちゃうみたいなションベン臭いガキなんだけれど、家庭環境が地獄で彼の曲だけが救いで、バイトして貯めたお金を使い込んじゃうくらいの子なんだから、イタいファンのリア凸ってしちゃうのも、それはさすがにかわいそうな気がして…。この出来事が怨恨に繋がってくるわけですが、それもまた人情かと。
歌唱シーンが多く、体感としては半分くらいライブ映像なんじゃないかな。最初に、映画全体の三分の一くらいの時間かけて、事件の発端となる女の子の事故死の件と、表に出ないラッパーと取り巻きたちの裏の顔をみせてから、ようやく主人公が出てくる。
最強エージェント・サッシャ様!熊みたいにゴツいロシア男を、ボクシングリングでボコボコのボコ。強いオンナ!痺れるね。戦闘力が高いのはわかりますけれど、私が守るのはクライアントだけですからって、いちいち言い方に角が立つし、それはそれでプロ意識に欠けると思いますけど…。
嫌いあってたのに、中盤からはあっさり男女のカンケイになってやんの。最強女エージェントは、男なんて必要としていなさそうだったのに。
奇しくも、ひとりの男をめぐる女の戦いに発展していくことで、彼女の戦闘力が強く印象付けられる。ラッパーの婚約者のムカつくオンナを泡風呂で水責め拷問するところで、疑わしきに容赦のない訓練されたエージェントと、二回沈められただけで泣きをいれる張り合いないパンピーという対比になって笑える。
ラッパーは実はいいやつで、死んだ女の子を悼む内容の曲を書いて最後のライブで披露するのだけれど、これまでのチャラついた曲よりも断然いい歌詞だったもんですから見直した。ロシア語はわかんないけど、他の持ち歌よりもサビの巻き舌とか多くて、スキルフルな歌唱だったと思う。
登場人物のなかで気に入ったキャラクターは、マネージャーの人。ホテルにそこらの場末の女連れ込んでて、あんまプロ意識とか無さそうなのに、宣伝動画のゴーストライターとしてメモを渡すところや、車内に乗り込んできて警官に賄賂を渡すところなど、外の道については手馴れてるカンジで、これはこれでプロかった。
意識高い系女子たちがステージに上がってきて、「ラッパーは女性蔑視の歌を歌うな!」とライブを妨害してきても、宣伝になるからと一旦様子見という判断を瞬時に下す策士。商魂たくましいのです。