れおん

屋根裏のラジャーのれおんのレビュー・感想・評価

屋根裏のラジャー(2023年製作の映画)
4.0
愛をなくした少女・アマンダには、たったひとり、とても大切な友達がいた。彼女が生み出し、彼女の想像した世界でのみ生きることを許され、他の人間にはうつらない想像の友だち"イマジナリ"のラジャー。「残念だが君は誰からも見えない。声も聞こえない。君たち"イマジナリ"は、忘れ去られ消えてゆく。」逃れられない運命のとき、残された時間はわずかしかない... ラジャーは、アマンダへの愛と希望を胸に、仲間たちと壮絶な冒険へと旅立つ。

しかと、ジブリの血を引いた作品だった。スタジオポノック『メアリと魔女の花』を想起し、あまり期待はしていなかったところ、良い意味で裏切られた。『君たちはどう生きるか』とは異なる系統として、子供から大人まで、家族で"楽しめる"長編アニメーション作品としての完成度が高い。

ジブリ色を残しつつ、ターゲットの年齢層を引き下げながらも、大人も深く考えさせられるような物語。洗練された作画はもちろん、登場人物の発する"意味深な"一つひとつの台詞に、心打たれる瞬間がある。他方でジブリ作品では許されない、登場人物の設定の煩雑さが極めて目立つ。主要なラジャーやアマンダは比較的丁寧に描かれているが、対する他のキャラクターの背景描写、明らかに物足りなさがある。

「想像が決して勝てないものがあるんだ。現実だ。」
「世界は残酷で、愛に溢れている。大切なのは、自分が信じる物語。」

家族で"楽しめる"長編アニメーションの重要性を考慮してもなお、『金の国 水の国』をはじめ(本作も...)、むやみやたらに製作すべきではない。派閥が異なるのは重々承知で、多くの反感を買うことを理解した上でアニメーション映画に対するミーハーな発言をすると、やっぱり、"日本のアニメーション映画"は、宮崎駿のジブリ、『AKIRA』、『パプリカ』、近年だと賛否はあるものの、新海誠や細田守作品を根幹に継承されていって欲しいと切に願う。
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