ソウキチ

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのソウキチのレビュー・感想・評価

5.0
「あのとき別の選択をしていれば、違う人生があったかもしれない」年を追うごとに可能性が閉じていく大人になると誰もが考える命題。だけど選ばれなかった無限の可能性たちこそが今の自分の戦う力になるというSF設定と、それをカンフーアクションに変換する奇抜さ。三十代なかばにして現在の自分の幸福の実感と共に並行して常に在るコレジャナイ感に想いを馳せている自分にとって、死ぬほどブッ刺さって五回くらい泣いてた。

貴方には無限の可能性が「ある」ではなく「あった」の視点で作られているのが誠実で切なくていい。すべての分岐したルートを剪定しニヒリズムに堕ちていくヴィランの正体と動機もすごく腑に落ちるし、それに対抗して主人公が会得する最強の功夫が普遍的な「愛」っての熱すぎるんよ。

マルチバースという情報量が多く難解なテーマを扱いながら、映像がスピーディーかつ面白すぎるうえにルールが明確なので、ストレスなく物語にライドできる演出力と脚本が凄まじい。MCUくん聞いてる?

『マトリックス』のオマージュ濃いめだし、他にも『スローターハウス5』や『ミスターノーバディ』(ジャコ・ヴァン・ドルマルの方)とかこの類の映画好きな人には間違いないです。

他にもいろいろ言いたいことはあるはずだけど、本当に自分の惚れた映画ってうまく言語化できないですね。そもそも言語化できたら映画なんか観なくていいんだけどね。間違いなくオールタイムベスト級の作品に出会えたし、今年はたぶんこれ以上はないと思います。

Don't think feel !
I love you in every universe
ソウキチ

ソウキチ