Fitzcarraldo

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのFitzcarraldoのレビュー・感想・評価

4.3
安心と信頼のヒットメーカーこと近藤健介選手のWBCでの八面六臂の活躍を見ていて日々ワクワクしているのだが…映画界において安心と信頼のヒットメーカーことA24が配給する良品が今年もやってくれた。

第95回アカデミー賞(2023)最多の10部門11ノミネートからの…作品賞を含む7部門を見事にかっさらう。

多様性、多様性、多様性が強調され、白人独占のアカデミー賞会員から比率を変動させた効果が早速見てとれる。

ブルース・リー御大のごときにディルド2本をヌンチャクのように振り回す映画が、作品賞のオスカーを獲れるわけがない…ほんの何年か前であれば。

そのオスカー像のような置物をお尻に入れたら、バースジャンプできるって何てシナリオなんだ…誰がこの案にGOサイン出したのか?最高だろ!?

これだけ突飛でふざけたアイデアは、仲間内で大いに盛り上がったとしても、撮影にこぎつけることもできずにボツにされお蔵入りになることが普通だろうけど…

万に一つで撮影できたとしても、編集の時点でカットされそうなところを…よくよく本編に残したなぁ…こんなアイデアをシナリオにするのも秀逸だし、これを本編まで異存なくGOした製作サイドの心意気にも拍手を送りたい。

日本なら…100%消されるね。
不動産会社のように、ただ売ることしか考えてない今の日本の映画会社には絶対に作れないし、どこもお金を出さないだろう…

日本経済は失われた30年…と当たり前のようにいわれているが…これは経済に限らず、文化の面でも同じ言葉が当てはまるのではないか。

豊かな土壌がなくては育つものも育たない。豊かな土壌に種を蒔き、面倒を見て育てる人がいなければならない。

ひとつの作物にこだわるのではなく、いろんなものを育てることをしなくては…どうしたって今はアニメに偏りすぎてるし、何かとシン・を付けたがる。

これでいいのか…
エブエブのようなカオスな映画が7部門も制覇するというのは…これはもうあと30年プラスしても勝てる気がしないのだが…

いまや海外から高い関税を払ってまでA24Tシャツをわざわざ取り寄せ、自慢げに着ている人も周りにちらほらと見受けられる。

東宝Tシャツ、東映Tシャツを欲しいやつなんていないだろう。

どうでもいい愚痴ばかりをつらつらと書き記してしまった。

何とも情報量が多い作品なので、一度くらいじゃ満足に楽しむことは難しい。いろいろフォローしながらフル回転でマルチバースの世界についていかなくてはならないため、後半にはオーバーヒートしてしまった。これも歳の所為なのか…単なる世代間格差なのか…

もう一度、見直してから改めたいと思う…


さらに余談だが…現地でアカデミー賞受賞式がまさに始まるという時間帯の朝8:45にIMAXで鑑賞。スクリーンに集中しつつも、裏で行われてるアカデミー賞の動向を気にしていたので、自分もお尻に何か突っ込めば一瞬でもバースジャンプできるかな?と思ったとか思わなかったとか。



もうひとつ余談を。
ピザ屋の看板を外でグルグル回してる自分にバースジャンプして、あのグルグル技術を身につけて無双するのだが…

NHK BSPで放送してる「世界ふれあい街歩き」のカリフォルニア篇?だったか?ロス篇だったか?忘れてしまったが…この番組で、ちょうど看板回しの男の子を紹介してて…その男の子曰く、看板回しの世界大会が開催されるということで、日夜その大会に向けて練習してると言っていた。

本当にブンブン器用に看板を回す彼を思い出して、個人的にはここが一番好きだったかな。日常にある何気ない風景というか、瞬間を逃さないしキチンと掴まえる能力と、それをシナリオに入れ込む才能とセンスが本当に素晴らしい。

恐らく…こんな瞬間は日本のどこかしこにも落ちているはず。それをキャッチできるかどうかがセンスなのかな…キャッチできたにせよ、それを作品にするまでに至る労力と努力の差か…


しかし、看板回しの世界大会を催すなんて…なんでも競技化してしまうアメリカの遊び心と、懐の広さを同時に感じて、うすら怖くもある…

渋谷センター街や歌舞伎町を歩けば、居酒屋のメニューを器用に回している若人は沢山いる。しかし、これを映画に取り入れようと誰が思うよ?しかも面白く…最適解はエブエブだろう。



ダニエル・クワン監督
「誰でも理屈抜きに楽しめる面白いアクション映画をつくろうとしてアイデアを出し合っているなかで、“もし『マトリックス』の世界にぼくたちの母親が入ってしまったら面白いんじゃないか”って思いついたんです。そのアイデアを掘り下げていったら、どんどん脚本を書くのも楽しくなっちゃって。だって、これまでアクション映画って30代の男性キャラクターがアドベンチャーに繰り出す……いうものばかりですよね。ぼくたちはそういう映画はいい加減に見飽きていましたから」


A24史上最高の興行収入を叩き出し、2022年で最もコスパの良い作品だともいわれているエブエブだが…

さすがに大作ほどの予算が出なかったのだろうから致し方ないのだが、少し気になったのは、税務署のビルにずっといること。

バースジャンプで色んな世界軸を見せてくれるから、ものすごい規模感は大きいのだが…ジャンプ先から戻ってくると、いつもあのビルの中で戦っているというのがだんだんと気になってしまった。

さっきから実はものすごい狭いところで、ずっと戦ってね?…いや別にいいんだけどね、マルチバースの世界が沢山あるから。
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