バルバワ

すずめの戸締まりのバルバワのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.5
公開前から妻と観ようと話しており、マックのハッピーセットでの今作の前日譚的な絵本を初日入手(アラサーのおじさんがハッピーセットを頼むのはなかなかの胆力がいりましたよ…)し、鑑賞日も互いに平日休みをすり合わせて準備を整えていたのですが…


バル子(仮名/4歳)が予防接種で発熱し、そこからコロナ感染して、それが見事に鑑賞日にぶつかりリスケすることに…。
因みにバル子はほとんど症状はなく、ピンピンして療養中『LEGO® ムービー』『レゴバットマン ザ・ムービ』『LEGO®ムービー 2』を観て「全てがさっいこ〜う!」とか「この歌あたまにこびりつく〜よ、イエェェェーイ!」と乗りに乗っていました。

バル子のコロナも完治し、今作を鑑賞するタイミングを完全に逸した我々に助けの手を差し伸べてくれたのはお義母さんでなんとバル子を旅行に連れていきたいとの申し出、おかげで夫婦で今作を観ることができました!

いやぁ…やはり映画館ッ!

あらすじは主人公のすずめと災いの扉「後ろ戸」を閉める閉じ師の草太(椅子)が各地を回って人情に触れながら災害を防いだり、キュンキュンしたり、猫を追っかける命懸けの珍道中!…的な感じです。

【怪獣だ!ディザスターだ!】
今作に出てくる地震を引き起こすミミズ周りの大災害未遂と終盤のバトルは非常に胸が熱くなりました。
まずデカい怪獣が反り上がり街に影を落としているという異常事態と同時並行でその街で生活する人々を映すとかもうめっちゃ気が利いてましたね!もうとんでもない大カタストロフが起こる気がムンムンでしたね!

そして、このミミズ周りのCGは『GODZILLA』アニメ映画三部作の監督の瀬下寛之さんが演出されていたので怪獣✕ディザスターの勘所を抑えている描写の数々にも納得です!

これだけで大スクリーンで観て良かったですぜ。…ちなみにこの感想を鑑賞直後に妻に伝えると嫌な顔をしながら「そこ好きだと思ったわぁ…」とゲンナリしていました。

【ジブリだ!ピクサーだ!そして…】
そして、名作アニメへのオマージュと思われる描写も多かった今作。中盤の東京でのミミズ退治シーンには『天空の城ラピュタ』、その後のドライブでは選曲と喋らなくなった猫とくれば『魔女の宅急便』、終盤の扉の向こうに落下するシーンは『千と千尋の神隠し』等など…あとは序盤の喋る椅子が周りの人々にバレないように押し黙るところは『トイ・ストーリー』っぽかったです。

そして、名作アニメではありませんが何と言ってもすずめが足の裏の怪我を応急処置してからのある覚悟を決めるシーンは『ダイ・ハード』を連想したのは私だけではないはずッッ!

イピカイエー!!


【あれこれ考えることができーる】
今作も日本の神話や言い伝えが物語や設定の元になっているので鑑賞後は夫婦揃って気になることだけ好き勝手に調べまくりました。

例えば、前述した大地震を引き起こすミミズは昔は地震のメカニズムが解明されていない時代は地震は"龍動"が原因だと考えられており、つまりは地底にいる龍が動いていたから地震が起きると信じられていたようです。
今作のミミズは龍にも観えるのでここから着想しているように思えます。そして、ミミズは地震を起こせないと雨になり、恐らくこれは浄化の雨であり雨を司る神様も龍の姿をしていることも多いので新海誠監督の前作『天気の子』にも繋がっているようでなんだか嬉しくなりました。

そして、主人公のすずめの名字が"岩戸"から日本の神話に出てくる天岩戸を連想できます。
その天岩戸の物語で[天岩戸に逃げ込んだ天照(太陽の神様)が鏡に写った自分を別人と勘違いする][天照が天岩戸から出てきて世界が明るくなる]という展開を抽出すると今作との親和性が窺えます。そして、天岩戸はすずめが住んでいる宮崎県にあるという…よく考えてるなぁ。

今作の憎きマスコットのダイジンはすずめが訪れた街でお世話になった客商売をしている所は繁盛しておるので多分招き猫的な意味合いもあるのでしょう。

因みに妻は「ダイジンは元々人間で子どもの人柱」という考察はかなり鋭いと思いますし、それを考えるとダイジンの「すずめの〇〇にはなれなかった…」というセリフにとても胸が締めつけられます。

こう好き勝手に考えるのって楽しいなぁ。

【監督からのお言葉です】
エンドロールで流れる《すずめ》という曲は最近何度もリピートして聴いており家では口ずさむ程にハマっておりまして、妻からは「音程違くね?」と呆れ顔をされております。

この歌の歌詞に「愚かさでいい醜さでいい正しさのその先で 君と生きていたい」という部分は今作の根幹に関わるテーマだと思います。

どんなに正しいとされることでも誰かの犠牲を強いることに対して新海誠監督はいつも「ふざけるな!」とNOと言ってきており、今作はさらに犠牲になるある人物の視点の無念や心残りを盛り込むことで「生きたい」という本来生き物が持っている根源的な本能を強調します。

同時に過去に起こった大災害を風化させたくないという主張も相まって、命の尊さをこの時代に我々に訴えかけているように思いました。

【妻vsバルバワ】
今回も互いの考察を鑑賞後に互いの観方を伝え合いました。ここでは作中に登場した場所について書き連ねます。

[妻の考察:大災害巡り説]
すずめ達がミミズを抑え込むときに立ち寄る場所は熊本県、愛媛県、兵庫県、東京都、岩手県なのですが、その全てが妻は大きな災害があった場所なのではないかと話していました。

調べてみると、熊本県は2016年の熊本地震、愛媛県は毎年のように豪雨災害、兵庫県は1995年の兵庫南部地震、東京都は1923年の関東大震災、岩手県は2011年の東日本大震災に見舞われています。まあ、日本災害大国なので調べればどこでも災害は起こっているのだろうとは思いますが、前述した災害を風化させたくないという作品のテーマとも合致しているので良い考察だと思います。

[バルバワの考察:地方活性化説]
新海誠監督がすずめ達が全国を回らせるのはズバリ日本経済が回るように、地方を活性化する手助けをするためではないかと。
新海誠監督作品となれば聖地巡礼をする方々も多い、そういう方々が作品に出てくる場所を回りお金を落とせばなかなかの経済効果が産まれるでしょう、さらに今は行動制限がないので遠出をするハードルも下がっていますので更に良い状態だと思うのです。さらにさらに、その地で震災が起こった場所を訪れれば人々が起こった災害を風化させないというテーマにも沿うのではとも思います。

[判定]
妻は事実に基づく考察しているのに対して、私の考察は憶測の部分が多く、また聖地巡礼する人々がマナーを守って観光することが前提のものなので今回は妻の勝ちですな。私が大人になりましょう!

【よくやった芹澤!】
東京から話がすずめも話のトーンも重くなる中、唯一ズーンとなった物語を救ってくれたのは閉じ師草太の友達、懐メロチャラ野郎芹澤とのドライブです。

彼がいるだけで物語にコミカルな要素が注入されるわ、事情がわからない芹澤は好き勝手なことを言うわで重くなった空気が軽くなり、物語のクライマックスまでの良いブリッジになりました。

君がいてくれて良かった。

【親を泣かす】
今作のドライブからは子育て世代には刺さる台詞と展開のオンパレードで特にサービスエリアでのすずめの伯母さんの心情吐露は同じことを思わなかったとは決して言えませんし、そのあとの自転車二人乗りシーンでの台詞も鑑賞しながら大きく頷きました。

そして、幼少時のすずめの必死の言葉はこの時の彼女がバル子と同い年ということもあって我々夫婦は号泣。このシーンは新海誠監督がこちらを泣かせにきているのは分かっているのに泣いてしまいましたよ…ちっくしょぉぉおぉおお!ズルいぞッッ!これは涙を監督にブン取られましたね…。

鑑賞前は「泣けるらしいですやん(*`∀´*)ノ グヘヘヘヘ」とか余裕をぶっかましてたらこのザマですよ…参りました。

【最後に】
まぁ、閉じ師の労働が過酷過ぎるのでもうちょい国が支援すべきだし、東日本大震災の時閉じ師は何をしたのかとか色々とモヤモヤすることはありましたが、鑑賞後近くにいた女子中学生のお二人が「男の方がお姫様的なポジションだったね」と非常に的を射た感想を述べておりました。やはり、新海誠監督作は映画館で観て周りの反応に耳を傾けると面白いので無問題ですな。
因みに『天気の子』の鑑賞した時は周りの男子小学生3人が《愛にできることはまだあるかい》を大熱唱しておりました。最高だったなぁー<⁠(⁠ ̄⁠︶⁠ ̄⁠)⁠>

今作は自分で自分を救う話で私は非常に好ましく感じ、新海誠監督が着実にステップアップデされてているということがよく分かりましたよ。←何様

さて、2022年妻と一緒に観た映画は…

☆『SING/シング: ネクストステージ』
☆『犬王』
☆『それいけ!アンパンマン ドロリンとバケ~るカーニバル』
☆『バズ・ライトイヤー』
☆『映画デリシャスパーティ プリキュア 夢みる お子さまランチ!』
☆『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』
☆『すずめの戸締まり』

…の7作品でした。このことを妻に伝えると「今年は全然映画観てないな」とポツリ。そしてこの中から2022年ベスト映画を決めて欲しいと頼むと「えぇ!ちょっと待って!いつまで?年末?」と真剣に考えている最中なので、妻のベストも今年最後のレビューで書かせていただきます。
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