千年女優

生きる LIVINGの千年女優のレビュー・感想・評価

生きる LIVING(2022年製作の映画)
3.5
第二次世界大戦からの復興進む1953年のロンドン。役所の市民課に働く中年男性で、お堅く気難しい性格で知られて女性の市民団体からの公園建設要望にも興味を示さないロドニー・ウィリアムズ。男やもめで息子夫婦にも軽んじられる彼が、癌で余命半年を宣告されたことで自らの生き様を見つめ直して余生を生きる様を描くドラマ映画です。

「世界のクロサワ」こと黒澤明が1952年に監督して世界的な評価を得る『生きる』を、幼少期に渡英した日本生まれの英国人ノーベル賞作家カズオ・イシグロの脚本でリメイクした オリヴァー・ハーマナス監督作品で、オリジナル版同様に普遍的な共感を呼ぶ物語が評価されてアカデミー賞を始め多くの国内外の映画賞にノミネートされました。

巨匠にリスペクトを示して時代設定もお話運びもオリジナル版に準拠したつくりで、今風のパキっとした高解像度のものとは違うレトロな質感の映像でビル・ナイの流石の重厚な演技を演出します。それ故にアダプテーションの面では物足りなさはありますが、ともすればキレイゴトになってしまう題材を控えめに意味深く描いている一作です。
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