Ryoma

エンパイア・オブ・ライトのRyomaのレビュー・感想・評価

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)
4.0
心地よいピアノの音色に載せて紡がれる映画館で働く中年女性と新入りで入ってきた若い黒人男性の絆や交流を描いたヒューマンドラマ。ワンカットとかではないけれど本作監督他作『1917…』でも感じた見事な撮影手法や街の美的な景観を捉えた美しいショットがとにかくよかった。映写技師の醍醐味や細部まで遊び心•ディテールが練り込まれた映写室など映画や映画館への愛が詰まった作品だったのと同時に、男性に虐げられてきた女性と白人に偏見の目を向け続けられてきた黒人というフェミニズムと人種差別という現代社会に通ずる二つの側面からの大きなメッセージを感じた。互いに心に深い傷を抱えた者同士が苦悩を吐露したり、お互いの苦悩を感じ取り行動に移したりするところはかなりぐっときた。『1917』や『007シリーズ』で象徴的な起伏や激しさなどとは対照的な作品ではあるかもしれないけれど、静かな感動という言葉がよく似合うしみじみ感じる作品に感じた。同時にサムメンデスという監督の多才さ、近年の他作とのギャップに心持ってかれた部分はあるのかも。
『ロストドーター』でもすごいと噂されるオリヴィアコールマンの表情含めた演技がもうホントにすごくて秀逸でもう演技じゃないみたいだった(←褒め言葉)。コリンファースも嫌いになるくらい演技うまってなった笑。トビージョーンズの優しげな表情、役どころもよかったな〜。近年『バビロン』や『サマーフィルムにのって』、次週は『フェイブルマンズ』と映画“や“映画館“をテーマにした作品が多い気がするけど、サブスクの浸透や最近傾向化しつつあるファスト映画への警鐘の意味も込められていたり、それによる度重なるミニシアターの閉鎖など映画離れが進んでいることも影響しているのかもしれないなと感じた。以前から楽しみにしてた本作、エンディングもよく素敵な作品だった。

ただ、性描写やその類いの表現がそれなりにあるためそこだけは少し気をつけた方がいいかもです。



memo📝
•舞台は1980年代、イギリスの港町。サッチャー政権下の失業と分断という状況下で、音楽や文学から生活文化などの価値観が激しく対抗した時代。


•第95回アカデミー賞において撮影監督のロジャー•ディーキンス(『ショーシャンクの空に』『ブレードランナー2049』『1917 命をかけた伝令』『007スカイフォール』etc…を手掛けた)が撮影賞にノミネート


•監督は、『アメリカン・ビューティー』で、デビュー作にして一躍オスカー監督となり、その後も『007 スペクター』などの大作も手がける英国演劇界出身の気鋭サム・メンデス。ヒラリー役は、『女王陛下のお気に入り』『ファーザー』『ロスト・ドーター』出演の女優オリヴィア・コールマン。
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