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TAR/ターのryodanのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.1
ターがジュリアードで論じる音楽論にウソはないと思った。心底、彼女は音楽を愛し、いつだって音楽に対して真摯であり続けた。しかし人間にはそれが出来なかった。人を信用せず、邪魔なものは排除していた。自分が持つ音楽に対する崇高な眼差しが、今ある彼女の評価と彼女自身がどこかで勘違いしていて、純粋で高潔なモチベーションに酔い、その裏でありとあらゆる画策で成り上がっていったのだ。才能と人間性は相反する典型的なケースで、クラシック音楽界だけではなく、どこにでもこういったケースは存在する。一ヶ所に力が集中する組織には往々にしてある。この人間の醜悪な部分を、クラシック音楽の持つある種の高みや境地、言わば神聖で美しいイメージによるマスキングで嫌悪感が常に伴う作品だった。
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