映画としては楽しめましたが、自分の好みかどうかという点では満足できませんでした。誰もがうらやむ才能と権力を持つに至った主人公が、その力を持ってしまったことで、バランスをくずし落ちぶれていく。その様子を観察するように突き放しているのですが、例えばキューブリックの『バリーリンドン』のような徹底しているわけでもないところが少し物足りませんでした。多分、この映画はコメディとして作られたのだと思います。アーティストであり、セクシャルな面に関して進歩的な主人公が、無意識的にせよ権力を行使しハラスメントまがいな行動を起こす。その皮肉な描写は良いと思いましたが、そのアイロニカルなユーモアが最後に場面にはありましたが、もう少し全面的に展開されていればよかったかなと思いました。
