カリー

TAR/ターのカリーのネタバレレビュー・内容・結末

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

そのカリスマとストイックゆえに現代音楽界を牽引していると称される女性指揮者リディア・カーの隆盛…と転落の物語。
この顛末の肝は人間関係だと思う。そして、引き込まれた理由の一つが無駄のない構成。
各人の関係性を、語りすぎず語らなすぎずに、言葉、表情、仕草などを駆使して視聴者に理解させる。
序盤では、リディアの指揮者としてのキャリアを知り、レズビアンのパートナーと家庭を持つこと、秘書で指揮者志望の女性を愛人としていることを知る。その立ち位置に足る魅力も備えているため、完璧を思わせられた(スパハニ、いやスパダリと言ってもいい)。
そこから徐々に垣間見えてくる、彼女の能力と権力ゆえの傲慢。公私混同や些細なうそも厭わない。
次第に仄暗い疑惑や悪感情に、仕事や私生活を侵されるようになり、その神経質さ、繊細さが顕著になっていく。
人間、精神的に追い詰められると末路はたいてい碌でもない。
それでもこの主人公を嫌いになる人はあまりいないのではないか。天才的な能力とそれを上回る努力を持ち、社交的でもあるという超人さには共感しえなくとも、内面では不安と葛藤を抱える脆さについては、誰しも理解できるし、理解してもらいたいと思うだろうから。
カリー

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