三次元からきたブロンディ

モリコーネ 映画が恋した音楽家の三次元からきたブロンディのネタバレレビュー・内容・結末

4.9

このレビューはネタバレを含みます

記録

ジュゼッペ・トルナトーレが5年に渡ってエンニオ・モリコーネに密着したドキュメンタリー作品。

モリコーネの生い立ちから彼が映画作曲家になるまでの経緯など細部まで記されていた。モリコーネは映画音楽家としての印象が強いが、元々の彼は医者を目指していたが、トランペット奏者でもあった父親の勧めで、そこで音楽を始めたきっかけとなった。モリコーネも当初は父親と同じくトランペットの道へと進み、通っていた音楽大学ではトランペットを専攻していた。ここで作曲指揮及び合唱法を学び、以降彼の師となるゴフレード・ペットラシに師事した。大学在学中にラジオ番組の編曲のアルバイトを始め、それ以降TV番組の作曲・編曲のアレンジャーや舞台音楽家として活躍した。そこから映画作曲家への道へと進む。しかし彼の師であるペットラシや彼の友人たちは映画音楽は「最低」として見下されていた。
しかしこれが彼の原動力となり数々の名曲を残した。
そして『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』で周囲の人たちが彼の事を認めてくれた場面は感極まった。

モリコーネの作曲工程は興味深いものばかりだった。『荒野の用心棒』にはギター演奏しながら口笛を吹き、『続・夕陽のガンマン』ではコヨーテの鳴き声を挿入するなどアレンジしながら曲を作っていたことが十分に伝わっていた。
さらにモリコーネはバッハの「フーガの技法」を応用とした作曲家の一人でもある。映画本編では『シシリアン』で語られているが、その他にも『華麗なる大泥棒』などが数多く用いられている。

本作はトルナトーレが監督しているので、彼の作品が中心に多く取り上げられると観る前はそう予想していたが、案外そうではなかった。『ニュー・シネマ・パラダイス』では多く語っていいはずなのだが、あの映画では「愛のテーマ」など一部息子であるアンドレアが作曲しているので、語りにくい部分があったのではないかと感じた。

出演者にはクリント・イーストウッド、クエンティン・タランティーノ、ベルナルド・ベルトルッチ、ジョン・ウィリアムズ、クインシー・ジョーンズ、ハンス・ジマー、ブルース・スプリングスティーンなど彼の曲に携わった映画人から作曲家、彼の曲を聴いてファンになったアーティストなど錚々たる顔ぶれがインタビューに答えている。

またスタンリー・キューブリックの『時計じかけのオレンジ』は元々モリコーネを起用する予定であったが、ある事情で頓挫された。もしあの映画がモリコーネで起用されていたら、どうなっていたか予想が付かない。

上映時間は157分と長丁場だが、モリコーネの名曲が数々と流れるので、長時間があっという間だった。
これは映画音楽ドキュメンタリーとして最高傑作でもありトルナトーレの最高傑作の作品でもあった。
いくつかの場面ではクスッと笑える場面もあるので、必見である。

本作は多くの人にオススメしたい!
これで自分も来週のコンサートに望める!