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天上の花のmakoのレビュー・感想・評価

天上の花(2022年製作の映画)
3.9
《僕は、あなたを十六年四ヶ月、思い続けてきた…》
◎79点

寺脇研プロデューサーの舞台挨拶付きで鑑賞。

本作は小説「天上の花―三好達治抄―」を原作として映画化されたフィクションです。
過去に残された作品や資料を元に、映画の創造力を駆使して構築された架空の物語であり、実名で登場する人物や状況の描写は事実とは異なります。(パンフレットより)
原作者は萩原朔太郎の娘・萩原葉子。
主人公は三好達治。
三好が思い続けていた人は、萩原朔太郎の末妹・慶子(実在の名前はアイ)。

【あらすじ】
昭和になってすぐのこと、萩原朔太郎を師と仰ぐ三好達治は、朔太郎家に同居する美貌の末妹・慶子と運命的に出会う。たちまち恋に落ちた達治は、結婚を認めてもらうため北原白秋の弟が経営する出版社に就職するが、僅か二ヶ月であえなく倒産。再び寄る辺なき身となった達治は慶子の母に貧乏書生と侮られて拒絶され、失意の中、佐藤春夫の姪と見合い結婚する。


萩原朔太郎は知ってるものの、三好達治は知らなくて😅
でも劇中に出てきた下記の詩は教科書にあったので知ってて、作者が三好達治だとこの映画で知りました💦
「太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。
次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。」

この詩はとても印象的で学生時代に習ったけど忘れてません。
なんだかほっこりした暖かみを感じる詩で好きです。
この詩の作者が、本作の三好と同一人物とは思えない。
本作の三好の愛は、狂気的というか妄執的な感じがしました。
あと、プロデューサーの寺脇さんが仰ってましたが、真っ直ぐで思い込みが激しいと。

慶子が結婚したから、三好は仕方なく詩人の佐藤春夫の姪・智恵子と見合い結婚。
智恵子は不美人(パンフに書いてあり私の主観ではないです)で、慶子と比べると見劣りしていたがいい妻でした。
子も出来、慶子を諦めたのかと思ったらそうでもなくて💦
朔太郎が亡くなった後、慶子の夫もその四日後に亡くなり、三回忌の時に三好は慶子と再会し、十六年四ヶ月の思いを伝え求婚する。
妻と子がいるのに、ですよ!
慶子から妻子がいるでしょ、と言われ離縁を決意って酷い😢
妻が可哀想でならなかった。

狂気的な愛は、慶子と結婚し越前三国にひっそり居を構え生活していくうちに徐々に表れてきた。
どっちが悪いとかではないけど、三好の思い込みの激しさが慶子との関係を悪化させたのだと思う。
美しい慶子だから、こういう人だろうと自分の思い描く慶子像を重ねてしまう。だが、そんな事は妄想でしかなく慶子の息苦しさ辛さが観ていてしんどかった。

東出昌大さんの演技はとても良かったです。本作の三好役にピッタリでした。
慶子役の入山法子さんの演技は素晴らしく、代表作になったのではと思いました。
終盤、チョイ役で有森也実さんが出演されてますが、有森さんも良かったです。チョイ役ながら存在感がありました。

映像も美しく見応えがありました。
パンフレットを買って寺脇研さんのサインも頂きました。
このパンフレット、中身が濃くて読み応えがあり買ってよかったです。
この中に、三好達治記念館長 三好龍孝氏の原稿が載ってました。冒頭に、「三好達治とはこのような男である」と決めつけたい宇野千代の指南(原作の初版単行本の帯の一文)による「十六年四ヶ月を思い続けた恋愛」の設定は、全く100%虚偽である。大阪の三好家の家風では、ここに描かれたような男は、人間として存在し得ない。
とありました。
フィクションとして観た方がいいです。私は何も知らずに事実かと思って観ました💦


プロデューサーの舞台挨拶付きでしたが観客が10人くらいで、こちらの方が申し訳なく思いました💦
それでも真摯にお話をして下さり、質問にも丁寧に応えてくれとても内容の濃いお話を聴くことができました。
観に行ってよかったです♪


ここからネタバレ気味に書くので情報を入れたくない方はここまで。行間を空けます⚠️
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寺脇研さんのお話を混じえながら書きます。

関係が悪化した頃から慶子に暴力をふるうようになった。
観客から、慶子を愛しているのに何故顔をビンタするのか、という質問がありました。
これは三好が軍隊に入っていたから教育的な感じでビンタをしたんじゃないかと。

暴力をふるわれた慶子は、家を飛び出し夫の友人宅に匿ってもらうが、その時友人の妻から「達治さんは慶子さんの事が好きだから」と言われ、挙句「妻なら耐えなきゃ」みたいな事を言われ、驚いた😲
1940年代の話なので妻が耐え忍ぶのは当たり前の事だったようですが、それにしても女性に対する扱いが酷い。
前妻は不当に離縁され、慶子は暴力をふるわれ、最終的には大怪我まで負わされてしまう。
慶子はこの時代の女性にしては、自分の意見をしっかりと言う、芯の強い女性で現代的な感じを受けました。

有森也実さんは台本を読んでヒロインがしたいけど年齢的に無理だから他の役でもいいから出演したいとの事で、終盤闇市で三好と出会う街娼の役になったそうです。

達治が自分で自分を殴るシーンは、本当に東出さんは自分を殴ったそうです。

実話で、三好と葉子とアイがエレベーターで再会したそうですが、三好とアイは目を合わせなかったそうです。

予算が『ラーゲリより愛を込めて』の1/10だったと笑いながら仰ってました。


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観客 10人くらい
劇場鑑賞 #9
2023 #9
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