アキラナウェイ

苦い涙のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

苦い涙(2022年製作の映画)
3.5
「イングロリアス・バスターズ」「ジュリアン」でフランス屈指の人気俳優となったドゥニ・メノーシェ主演。そして変態的な美意識の持ち主、フランソワ・オゾン監督。

この組み合わせに惹かれて鑑賞。

ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の「ペトラ・フォン・カントの苦い涙」(1972)のリメイクだそう。オリジナルは全く存じ上げず。

映画監督ピーター・フォン・カント(ドゥニ・メノーシェ)が暮らす、事務所も兼ねたアパルトマンに親友で大女優のシドニー(イザベル・アジャーニ)が青年アミール(ハリル・ガルビア)を連れて訪れる。アミールの美しさ一目で恋に落ちたピーターは、彼を自宅に住まわせ、映画の世界で活躍できるように手助けするが—— 。

麗しき青年に恋するおじさん。
それはもう狂おしい程に。
いや寧ろ、ここまで恋に狂えるのか!?

ドゥニ・べノーシェは太っちょさんなので、アミールを恍惚とした表情で見つめる姿も、嫉妬に怒り狂う姿も、どこか可愛い。マブリーがラブリーなのと同じ原理だな、これは。

ほぼワンシチュエーションで展開する中で、人の感情の揺らぎを鮮明に映し出している。鏡を使った演出もお見事で、そこは流石のフランソワ・オゾン。

イザベル・アジャーニは名前は知っていたけど、出演作を観るのは初めて。昔は美しかったんだろうなぁ〜。

とにかくおじさんが悶え苦しむ姿を見せられるが、85分と言う短尺で飽きさせず、そして何よりラストにある人物がピーターにしっぺ返しを喰らわせる展開が痛快過ぎて声が出た。

同性愛を描きながらも、意外とフランソワ・オゾンの変態風味は薄い気がする。