スワヒリ亭こゆう

午前4時にパリの夜は明けるのスワヒリ亭こゆうのレビュー・感想・評価

4.5
『アマンダと僕』の監督作品ですね。『アマンダと僕』がとても良いのとタイトルに惹かれて観に行ってきました。
『午前4時にパリの夜は明ける』
午前4時に何かが始まるのはちょっとだけワクワクします。
僕にとっては「もう朝じゃん。でももう一杯だけ行かない?何なら始発待とう!」っていう、何の色気もないですけども😅

時代は80年代。
フランスの大統領がミッテランになった事を祝う所から映画は始まります。パリは祝福ムードなのを見るとフランス人にとっても良い日だったんでしょう。けど、日本人でまだ生まれてない僕はちょっと分からないです。それでも映画の作り方としてはフランス人には当時を思い浮かべやすい導入だったんでしょうね。
それは何となく伝わってきました。

そんな時代にエリザベート(シャルロット・ゲンズブール)は夫と離婚する。
映画はエリザベートの自立というのも1つのテーマになっているんですね。
二人の子供、姉弟は既に大人になっているもののまだ学生。弟のマチアスは高校生です。エリザベートはラジオ局で働く事になり、そこで出会った宿無し少女タルラを保護して家に連れ帰り、一緒に暮らしだします。
そしてタルラと共に家族の日常を描いていきます。

この映画は映画的に特別な事は起こらないです。
だけれどもエリザベート家族の中で特別な事は起こるんです。その一家の日常の特別を描いていて、それを垣間見ている様な感覚になる映画ですね。
とても俳優陣は自然で尚且つ美しく優しく、そしてノスタルジックに描かれる。彼らの自然な日常を彩ったストーリーが心地良く観れる映画でした。

80年代のパリなんて無知な筈なのにノスタルジックに感じるのも不思議なんです。
本作ではタルラっていう少女が居候になる。
めちゃくちゃ可愛い女の子を母ちゃんが連れて帰ってきた息子マチアスの気持ちになって、観てたらめちゃくちゃ羨ましく感じました。
この居候パターンのシチュエーションがノスタルジックに感じさせたのかもしれません。
『うる星やつら』『電影少女』的な爽やかなエロさもありますしね。
タルラの女優さん自身も【マルセイユの悪童】でお馴染みのシリル・アビディみたいな眉毛ではありますが、可愛い女優さんでしたね。

シャルロット・ゲンズブールが強い女性像だと、この映画は成立しなくて、か弱さを感じるから成立した映画でしょう。
エリザベートの涙は子供の様に泣くんです。他の人なら、大の大人が人前で泣いて…って思うんですけど、シャルロット・ゲンズブールは同情を誘います。
この辺りの演技が非常に良くて、流石だなぁと思います。

日常を忘れる為に映画を観る。それも良いけど本作の様な他人の日常を観る映画というのも良いです。
80年代の映画なので良い意味で責任感を感じる事なく観れます。
人間讃歌の様なストーリーだから、観終わって気分が良いんでしょう。