よしくん

PLAN 75のよしくんのネタバレレビュー・内容・結末

PLAN 75(2022年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

非常に暗い気分になり、また自分の将来を考えてしまう作品。リアリティがあり、ストーリーは重く暗いが作品の評価は高いと感じる。

主人公の78歳の女性は高齢になり仕事をクビになり、アパートまで退去させられそうになり、生きてゆくことが不安になる。別のアパートに入居するにも2年分の前家賃が必要と言われて、生活保護タイプの家を勧められるもの、まだ働けると思うと断る。かと言ってこの先どう生きてゆけばいいか? やっと見つけた仕事は、点滅する赤色灯を身につけ、深夜の道路誘導員になる。高齢女性が一晩中、工事現場の道路での立ち仕事だ。

そんな生活の中、自分から死を選べるPLAN75を申込む。支度金10万円が貰え、合同プランだと火葬や霊園も他の人と同じだという。健康診断も家族の承諾も不要だ。不安になれば、その日が来るまでコールセンターの人と一回15分話せる。15分経つと受話器の向こうでチャイムがなるのだ。年寄りは寂しく15分はあっという間に経つ。

死ぬ前には、特上の寿司の出前を頼むが一人前では配達しないなどと言われる。事情を話すのも嫌だが、そこまでしてやっと届けてもらう。

最後は薄暗い部屋で、ベッドに横たわり、鼻と口を覆う吸入器から薬品が出て安楽死する。それで終わり。翌日鍵のかかっていない亡くなった人の部屋に、PLAN75の係の人が訪ねて大家に部屋を戻し、所持品は、処分係が処理をする。生きていた痕跡は、もはやなくなる。

ーーー
この生活そのものは、今の世の中にもごまんとあるだろう。プラン75という制度がないだけ。

でも、体は健康でまだまだ生きられるのに、社会の中で居場所がなくなり死を選ばざるを得なくなる。それでは、今まで、何のために働き、食べ、医者にゆき、辛いことにも耐えて生きてきたのだろうか? これは希望を失う自殺と何ら変わりはない。

若い人たちも、いずれこうなるならと、前向きに生きられなくなりはしないだろうか。

人類は、元々の動物的寿命を遥かに伸ばして、社会で高齢者を支えきれなくなってしまう自己矛盾に陥った。

しかし、プラン75のように死を選択できるならまだ良いのかもしれない。人為的なウイルスや、ナノチップの入ったワクチンの噂も絶えない。

この人類の限界にどう対処するか。実は今の現実は、この作品の比ではないくらい先に進んでおり、もう我々はその中に組み込まれているかもしれない。もしそうなら当然パニックにならないように、きっと静かに我々に気づかない形で溶けこんでいるはずだ。

仮にそうだとしても、希望と生きがいを最後まで持てる人生を生きたいし、そういう社会でありたいものだ。そういう気づきをこの作品は与えてくれたと思う。
よしくん

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