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PLAN 75のkanegoneのレビュー・感想・評価

PLAN 75(2022年製作の映画)
4.0
とってもリアル。
映像も、ストーリーも。

これが絵空事か、って言われると、そうでもないよね、と思います。

高齢者比率が高すぎると、国全体として若者の生計を立てるのが、程度の差こそあれ、難しくなる。それは絶望感とかテロ的なものの増大に直結するわけで、

その方々への福祉が「高齢者がそこそこしかいなかった時代」の基準を引きずっていることが問題なんだけど、

それを議論すると政治家が次も当選できなくなるから、整理されるべきことが整理されない。


若い人や子育てしてる人、納税してる人ほど投票ポイントを多く使えるようにして、国営負担者の意見がもっと通るようにしたほうがいいと思うんだけど、そうならない。

同じ問題が企業にも蔓延っているから、古い体質の日本らしい?企業ほど、若年、中堅層の離職が激しい。負担者の発言力を高めるしかないのに、そうならない。

だから戦力的な人ほど抜けていって、どんどんいびつになる。荒唐無稽な前提だけど、日本が英語圏だったなら、40代以下の人はもっと大きな規模で海外移住してます。東京から遠いところから、東京へ人が集まっているのと同様の力学によって。

この国はいま、そういう国になっていっている最中。だから、

75歳を超えてなくても、「消えてなくなりたい」と思う人はけっこういるかもしれない。

シュワッと、痛みも悲しさもなく、蒸発することができるなら。

それくらい、いまこの国で、納税者が希望を持って、健やかに生活するということは、大変なことだと思う。

ただ、生きるのにお金は必要なんだけど、人生って、歳をとるほど「今日いちにち生活ができればいい」というものではない、ということを感じるものだと思うから、


高齢者が、若い人や納税してる人たちの助けになれる仕組みや流れがもっとたくさんあると、みんなの幸福感が増してテロ的なニュースは減るのかもしれない。

高齢者がみな「乗っかり」では無く、自律的に、あるいは若年世代との相互扶助的に生きられて幸せなら、皆がこの国の先行きに不安感を抱かなくて済むのかもしれない。

ちょっとしたおしゃべりや、相談をゆっくりできる時間が、お互いの世代に有ればいいんだけど。個人的にも、御年寄の方とゆっくり話すのは嫌いじゃないんだけど。

働く人の多くには、その余裕がなかったりする。利用者は多く、提供者は少なく、現場にいる人達は効率化の結果、余裕が奪われているから。嫌だな。

と、そんなことを考えながら眺めてしまいました。


弱者に想いを寄せて観るのか、社会の持続性に目を向けて観るのかで、受け止め方はずいぶん違ってくると思いますが、いろんなことを感じられる映画。

御年寄がみんな綺麗に撮られてて、物語も地に足のついた演出で描かれていて、上品な映画。

この国の体質みたいなもの、特に「オジサンのオジサンによるオジサンのためのルール」みたいなものに日々疑問を感じている人には、おすすめの作品。

観れば何か思うことがあるかと思います。
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