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僕らの世界が交わるまでのkuuのレビュー・感想・評価

僕らの世界が交わるまで(2022年製作の映画)
3.6
『僕らの世界が交わるまで』
映倫区分 G
原題 When You Finish Saving the World
製作年 2022年。上映時間 88分。
俳優ジェシー・アイゼンバーグが長編初メガホンをとったヒューマンドラマ。
アイゼンバーグがオーディオブック向けに制作したラジオドラマをもとに自ら脚本を手がけ、ちぐはぐにすれ違う母と息子が織りなす人間模様を描く。
ジュリアン・ムーアが母エブリン、フィン・ウルフハードが息子ジギーを演じた。
俳優エマ・ストーンが製作に名を連ねる。

DV被害に遭った人々のためのシェルターを運営する母エブリンと、ネットのライブ配信で人気を集める高校生の息子ジギー。
社会奉仕に身を捧げる母と自分のフォロワーのことで頭がいっぱいのZ世代の息子は、お互いのことを分かり合えず、すれ違ってばかり。
そんな2人だったが、各々がないものねだりの相手にひかれて空回りするという、親子でそっくりなところもあり、そのことからそれぞれが少しずつ変化していく。

ジェネレーションギャップちゅう言葉はあまり言葉にだして使わなくなってきたが、この言葉が指す問題は永遠のものであり、俳優ジェシー・アイゼンバーグの脚本家・監督デビュー作となる今作品の核心でもある。
10代のシンガーソングライター、ジギー・カッツを演じるフィン・ウォルフハードは、インターネットの片隅でミニ・センセーションを巻き起こし、若者の愛と苦悩を歌ったフォーキーな曲で忠実なフォロワーを増やしている。
しかし、母ちゃんのエブリン(ジュリアン・ムーア)は女性保護施設の創設者兼マネージャーとして多忙を極めており、彼の事業と才能の両方を格下げしている。
父親ロジャー(ジェイ・O・サンダース)は、いつも本や雑誌に鼻を突っ込んでる学者タイプ。 母と息子の衝突は特に激しい。
エヴリンは、息子が自分でも定義できないほど、どこか違っていてほしいと願うばかり。
特に賢くて繊細なティーンエイジャー、ビリー・ブライクのカイルが母親とシェルターに引っ越してくると、エブリンは個人的なプロジェクトとして彼を引き受け、彼が例外的に得意なメカニックになることを目指しているにもかかわらず、大学の奨学金に応募するよう勧める。
ジギーは母親への苛立ちのあまり、自分が脇に追いやられたことにさえ気づかない。
また、同級生で政治活動家の卵、アリシア・ボー演じるライラへの恋心にも気を取られている。
彼女は情熱的だが、レトリックの紡ぎ手であり、彼の中の不器用な恋愛詩人にはかなわない。
これが、今作品をギリギリではあるが支えている、穏やかで織り成された緊張感。
彼女はのんびり屋とは正反対だが、いまだに自分を理想主義的なヒッピーとみなしている。
シェルターでのストレスフルな一日の後、くつろぎながらゴブレットでマルベックを回し飲む姿でさえ、堅苦しい。
しかしアイゼンバーグは思慮深い映画監督であり、登場人物を多面的で欠点のある人間として見せることに専念している。
これは控えめな映画やけど、表面的なものではないし、重要なんは、親子ちゅうもんは時に、心を通わせる前に互いを見失わなければならないことがあるということなんじゃないかな。
親と子の間の空間は、隔たりというよりも、世代を越えて繰り返される再接続のサイクルなんやし。
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