シャチ状球体

ジェイコブと海の怪物のシャチ状球体のレビュー・感想・評価

ジェイコブと海の怪物(2022年製作の映画)
4.3
ドレグモア海に潜む怪物・ブラスターというのは、人間が他の生物と共存できるかどうかが試される試練のようなもの。
怪物の存在を名目として軍拡を進める王国や自己犠牲を美徳とするトキシックな規範が強いハンターの世界……海の悪魔は誰によって作られたのか、問われているのは人間社会の排他性だ。

怪物を守ろうとするメイジーやジェイコブの良心は人類が見習わなければならない未来であり、戦争と排除はいかなる理由があっても否定されるべきもの。
この映画は軍政によって伝統ある個人事業が縮小していく様子と、悪しき伝統が平和への道を壊し続けているという多面的な構造を描くことで復讐の連鎖や人間の都合による他生物の殺害を否定している。歴史は勝者の都合の良い解釈で作られること、民主主義を育てない国は足元から腐っていくこと……小中学校で教材として使われていてもおかしくはないほど多くの教訓を教えてくれるおとぎ話だった。

死ぬ必要がある人間なんて誰一人いない。殺すことを止めさせなければいけない人間は山ほどいる。
シャチ状球体

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