ぶみ

リボルバー・リリーのぶみのレビュー・感想・評価

リボルバー・リリー(2023年製作の映画)
2.0
未来を救う悪になれ。

長浦京が上梓した同名小説を、行定勲監督、綾瀬はるか主演により映像化したアクション、ではなくファンタジー。
元スパイの主人公が、家族を殺された少年を助けたことから、陸軍に追われる姿を描く。
原作は未読。
主人公となる元スパイの小曾根百合を綾瀬、顔見知りの弁護士・岩見を長谷川博己、居酒屋の従業員・奈加をシシド・カフカ、琴子を古川琴音が演じているほか、羽村仁成、清水尋也、ジェシー、佐藤二朗、吹越満、内田朝陽、板尾創路、橋爪功、石橋蓮司、阿部サダヲ、野村萬斎、豊川悦司等が登場と、なかなか豪華なメンバーが集結。
物語は、関東大震災後である大正末期の東京を舞台とし、元スパイである百合が、少年を救ったことから陸軍に追われることとなる様が描かれるのだが、冒頭、百合が凄腕の元スパイであったことが、映像ではなく、味気ない何行かの文章で説明されたことで、いきなりテンション下がりまくり。
反面、直後にある少年の家族が惨殺されるシーンや、その後にある列車のシーンは、なかなかのクオリティで持ち直したのは良かったところ。
ただ、ピークはここまで。
以降は、百合と陸軍との追いかけっこがメインとなって、要所要所にアクションがある程度となるのだが、アクションシーンの少なさは仕方ないとしても、暗闇の中であったり、都合良く霧が立ち込めたりと、予算のなさを映像の見にくさでカバーするような見え見えの設定が散見されるとともに、百合等主人公が放つ銃弾は百発百中、相対する陸軍等は、百合が棒立ちであってもかすりもしないという体たらくであり、子ども向けのヒーローものを見ているかのようなシーンばかりなのは、目が肥えた大人の鑑賞にお世辞にも耐えるものではなく、もはやコメディかファンタジー。
また、大正時代末期を再現したセットや小物の仕上がりは上々であり、当時の空気感の再現性は抜群である反面、不自然な光の当たり方を筆頭にセット感や背景がCG感満載なのは邦画のお約束であり、観るたびにガッカリするところ。
加えて、原作があるのでしょうがないのだろうが、説明的な台詞が多いのにも関わらず、謎の老婆が出現したり、中途半端に実在の人物が登場したりするのも違和感ありまくり。
私は特段綾瀬のファンではないのだが、ミスキャストの俳優陣が散見されるものの、豪華俳優陣の共演は、やはり見ているだけでで楽しいものであり、そこは数少ない見どころの一つなのと、シシド・カフカを、ずっと早見あかりだと思って観ていたのは恥ずかしい限り。
物語自体はサスペンス色が強く、そこそこ練られていただけに、もう少し映像面での頑張りが必要であり、手放しでアクション作品と言えるほどアクションのキレはなく、子ども向けヒーローものを、豪華俳優陣とセットで厚化粧したかのような内容には落胆しかない、いや、まだヒーローものの方が程度が良いと思うともに、終了後、場内が明るくなった直後、近くで観ていた夫婦と思しき二人の夫が開口一番、「絶対に死なんなあ」と苦笑いしながら妻に言っていたことに、賛同したくなった凡作。

このままでは、日本は自滅するぞ。
ぶみ

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