ヨーク

鋳鉄のヨークのレビュー・感想・評価

鋳鉄(1964年製作の映画)
3.7
先日早稲田松竹での延長戦でさすがに終わりだろうと思っていたが、監督の逝去に伴いイオセリアーニ追悼特集ということで渋谷イメージフォーラムで観ることができました。
イオセリアーニ追悼特集1本目、と一応記録のために書いておこう。
さて本作は『鋳鉄』というタイトルの通りにルスタヴィ冶金工場での溶鉱炉での作業に従事する人々の姿を描いたものです。まぁ20分の短編映画なので長々と感想を書くつもりはないが、本作で描かれる工場の労働風景は中々に凄まじかったですね。
本作は1964年の映画らしいが、いやこれ当時の安全基準としてもかなりアレな現場ではないのか? 時代の問題というよりソ連特有のアレなのか? とも思うのだが、ちょっとつまずいたら即あの世へ行ってしまいそうな環境でなんかめっちゃハラハラしながら観てしまったよ。現代の鉄工所とかで働いてる人が観たら卒倒するのではないだろうか。ま、その辺含めて面白かったのだが…。
でも面白かったのはそういう危険な労働風景だけというわけではなく、工場内のあらゆる風景、特に溶けた鉄が流れていく様とかは普通に映像として美しい。ちなみにイオセリアーニは本作を撮るために身分を隠して4カ月ほどこの工場で働いていたらしい。凄い執念である。ただそのせいもあってか休憩中にリラックスして食事してる工員たちの姿なんかも見事に捉えられており、その牧歌的で呑気な光景はその後のイオセリアーニ作品の核にもなっている部分なので本作の時点ですでにその作家性が現れているというのは見所でもあり発見でもあった。
面白かったです。
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