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イル・ポスティーノのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

イル・ポスティーノ(1994年製作の映画)
3.9
チリの詩人で共産主義者のパブロ・ネルーダが祖国を追われた際にカプリ島へ身を寄せた史実をもとにしたというアントニオ・スカルメタの小説「バーニング・ペイシェンス(燃える忍耐)」を、マイケル・ラドフォード監督が映画化。
ナポリ沖合の小さな島を舞台に、貧しい純朴な青年と島を訪れた詩人との友情と、青年が詩に目覚め成長していく姿を、美しい島の自然と共鳴させて描いている。
原題:Il Postino, The Postman(1994)

ナポリ沖合いの小さな島に父と暮らす無口で素朴な青年マリオ(マッシモ・トロイージ)は、漁師が嫌いで、仕事をしていなかった。
ある日、チリの著名な詩人で外交官のパブロ・ネルーダ(フィリップ・ノワレ)が祖国を追放され、妻マチルデ(アンナ・ボナイウィート)とともに島にやってくる。
世界中から届くファンレターを配達するため、マリオがその配達人として臨時に雇われる。
毎日手紙を配達するにつれ、2人の間にいつしか友情が生まれる。
ネルーダは美しい砂浜で自作の詩をマリオに聞かせ、詩の隠喩(メタファー)について語る。
島の食堂で働くベアトリーチェ(マリア・グラッツィア・クチノッタ)に恋をしたマリオは、初めは詩を道具にして彼女に近づこうとするが、次第に詩に魅了され、自分も詩人になりたいと思うようになる。
ネルーダは無口なマリオのため恋の仲介をしてあげたりするが、やがて逮捕命令が解除され島を去る日がやってくる…。
それから、5年後、パブロは再び島を訪れる…。

「詩は書いた人間のものではなく、必要としている人間のものだ」
「女と寝るとなったら男はみんな同じさ。詩人も司祭様も、それこそ共産党員も」
「作品番号1番カラ・ディ・ザッカーソットの波、さざ波…8番 パブリートの心音」
「パブリートとは呼ばないわ」

音楽はルイス・エンリケ・バカロフで、哀愁に満ちた鎮魂のピアノ演奏が印象的。
主演2人の存在感がこの作品を支える。
ベアトリーチェの親代わりの叔母さんローザ役のリンダ・モレッティもいかにもイタリアの叔母さんという感じでよい。
なお、心臓病に冒されていたマッシモ・トロイージは、予定していた心臓移植の手術を延期して撮影に臨んだが、撮影を終えた12時間後41歳の若さで亡くなっている。
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