Omizu

海軍特別年少兵のOmizuのレビュー・感想・評価

海軍特別年少兵(1972年製作の映画)
3.8
【1972年キネマ旬報日本映画ベストテン 第7位】
『また逢う日まで』今井正監督作品。東宝創立40周年記念作品で、「東宝8.15シリーズ」最後の作品である。リアリズムに徹した反戦映画となっている。

これまたアマプラレンタルでしか観られない作品。最近ようやくDVDにはなっているようだが、レンタルにはなかった。

最初と最後が繋がる構造になっていて、派手な特撮は使わず戦争のリアルを伝える誠実な作品になっている。

14歳で戦場に駆り出された少年たちの過酷な訓練、そして指揮する教官たちの思想や葛藤をリアルに描いている。そのあたりはさすが今井正。

少年たちが志願するまでの過去がそれぞれ描かれるのだが、各々立場は違うものの胸が痛い。「お国のため」という美名につられて過酷な訓練を受け戦場に出るまでが辛い。

一方、教官たちは教官たちで思想が違い、ぶつかり合う。力を重視する鬼教官、愛を重視する優しい教官、諦めの境地にいる教官など。

「敵国の言葉を習って役に立つのか」という言葉がラスト(冒頭)に繋がる構成が上手い。上手いと同時に残酷だなとも感じる。

決して楽しい映画ではないが、名匠今井正が紡ぐ戦争叙事詩は見応えがある。内容の濃い127分間だった。
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