あおき

長ぐつをはいたネコと9つの命のあおきのレビュー・感想・評価

3.9
「シュレック」のスピンオフ映画「長ぐつをはいたネコ」の続編。ひさびさに劇場で観たアニメ映画。めっちゃオススメ!!

『猫には9つの命がある』という逸話に則っている点に感心するも「8回死んじゃってもう下手に死ねない…ヤべぇ」というアホみたいなあらすじがキャッチーで良いよね。

前評判で冒頭のアクションがかなり賞賛されていたけれど、噂通り素晴らしかった。激しいアクションに対してコマ割りがわりと粗くて最近のCGアニメ洋画とは違った味があるんだけど、立体感にはかなり凝っていて、かつ動きや視点誘導がめちゃくちゃ見やすくて驚いた。
その前に観た「シン・仮面ライダー」のアクションがとてつもなく見難かったのもあるかもだが…最近のマーベル作品なんか余裕で凌駕するパワーが籠っていたと思う。


で、さらに脚本もとんでもなく巧い。

テーマはシンプルに「願い」…なんだけど、それすなわち『自分の持てるものを無視した無いものねだり』だったり『ステレオタイプや過度な理想像を自身に課すこと』に通じているという、かなり大人びたテーマ。
人生はそんな虚しい「願い」に支配されがちで、それが虚飾や傲慢といった鎧を自分に被せてしまう。で、死を意識したりといざ大きな岐路に立ったりすると、むしろその虚飾に固執してしまって、より強い「願い」に溺れてしまう。

それでも良心の呵責をしかと噛み締め、自分の持っている「ちょうどよさ」に目を向けて、虚飾の鎧を脱いで、一度きりの人生を出来るだけ誠実に生きようぜという強い教訓を感じた。

初見では「こんなにキャラクターが多い必要あった?」と思ったが、よくよく考えるとそれも先述した通り「願い」とそれに通ずる虚飾の度合や要因が人によって多様であることを表現するために不可欠なキャラクター量だったんだなーと、今は感じてる。

ていうか「シュレック」シリーズでかなり有名どころの童話が出切ってしまったからか、知らない童話がモチーフになっていて初見は困惑した(笑)ウルフは当然ながらあらゆる童話でヴィランとされているが…。
今回のキャラ達は「ゴルディロックスと3匹のくま」というイギリスの童話と、「ジャック・ホーナーくん」 というマザーグースの童謡から。

「熱すぎず、冷たすぎず、ちょうど良いお粥」というのは完全に童話ベース。あらゆる学問でちょうど良さを表現する「ゴルディロックスの原理」なんて言葉があるのを初めて知った!

人生における「ちょうど良さ」は常に目の前にある…なんていうとありきたりだが、前述のとおり虚飾が邪魔をして、その「ちょうど良さ」を直視するのは確かに難しいだろう。最終的にキャラクター達がワンコやジムニークリケットを傍に置いたように、私たちも常に良心に従えれば良いんですけどね。
あおき

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