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ショーイング・アップのmocoのレビュー・感想・評価

ショーイング・アップ(2022年製作の映画)
5.0
好きな方が、痺れましたよっておすすめしてくださったので、とても観たかった映画。

芸大に通っていた頃のことを思い出した。
どこの国にも、こういう人たちがいるんだなって、ちょっと懐かしくなった。
やるべきことや制作に追われているはずなのに、拍子抜けするくらいゆったりと流れゆく、真昼間の校舎の、あの永遠に広がりゆくように思える時間。あの時間は本当に尊かったんだなって改めて思った。

リジーの常時イライラしてる感じも、最低って自分を罵りながら、でも生き物や人のことを蔑ろにできない感じも、ちょっと共感できた。成功しているように見える人たちは、だいたいみんな自分勝手で、でもそれがそういう方々の、愛おしく、素敵で、見習いたいと思ってきたところ。
リジーも素敵。とにかく、学生であっても学生を終えても、制作を続けている人たちは凄いし、先に観たヴェンダースの『PERFECT DAYS』のように、直接的なものづくりをしていなくても、光の揺らめきや咲いている植物なんかに、目が留まるってだけでみんな素敵だ。

生活と制作。自分の今の状況とも重なる点や、身の回りにいる人たちとも重なる部分があり、ちょっと泣きました。
たとえ、人から必要とされなくても、ものづくり続けてゆきたいし、"歪"を愛していける人間になりたいな。

映像やショットもよかった。
粒子が蠢いていた。
フィルムじゃなくデジタルで撮られているらしく、これからの映画の、いろんな可能性を感じた。デジタルだからって諦めちゃダメなんだなって思った。
カメラの、人物や静物の捉え方が、淡々としていて、心地よかった。

終わりもよかった。
とてもひいき目で観てしまったかも?だけどそれでいい、私の映画史がまた更新されたから。これを勧めてくれた方こそ、本当に素敵だと思う。
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