しゅんすけ

別れる決心のしゅんすけのレビュー・感想・評価

別れる決心(2022年製作の映画)
4.5
「別れる決心」

Filmarks主催の試写会にご招待いただき、一足早く鑑賞できました。

「オールド・ボーイ」「お嬢さん」のパク・チャヌクの最新作。
崖から転落死した男性の妻と、事件を追う刑事を描いたサスペンスですが、かなり恋愛映画要素が強めでした。

 なので、過去作のバイオレンスやエロスのハード展開が好きな人にとっては、ちょっと物足りなさを感じるのかもしれませんが、映画を観てて美術や小道具に目が行く人や、バイオレンスが嫌で今までパク・チャヌク作品を敬遠してきた人にとっては、ハマる1本かなと思いました。

 「お嬢さん」でより顕著になった3章構成や、同じ事象をそれぞれの登場人物の違う視点から見て、次第にシンクロさせていく展開は相変わらずお見事で、複雑な話なのですが、構成のうまさでしっかり138分退屈させずに楽しませてくれます。

 刑事の住む世界は、血と暴力であふれていて、奥さんとのやり取りはセックスにまつわることばかりなのに、この刑事と被害者の妻の関係はとてもロマンチックなやりとりで、この対比があるからこそ、この映画はすごく純度の高いラブストーリーになっているし、最後のシーンがすごい残酷だな~と思いました。

 主演のタン・ウェイが素晴らしくて(79年生まれの43歳!)、「ラスト、コーション」の時はトニー・レオンとのハードなセックスシーンなど、体を張った演技が注目されていた印象でしたが、本作では最後まで「悪女」なのか「悲劇のヒロイン」なのかよくわからない絶妙なところを綱渡りしていて「いい役者さんだな~」と感嘆しました。

 あと、「お嬢さん」における日本語と韓国語のように、中国語と韓国語の言語の違いを利用したサスペンスやロマンスシーンも見事でしたし、終了後のトークショーで山崎まどかさんが指摘されていた「スマートフォンなどを珍しく上手に使った映画」でもありました。たしかにこの手の推理ものって、結局は本や資料の読み漁り、容疑者の生まれた土地に直接足を運ぶなどアナログな手段に進むところを、スマホのアプリや翻訳機能を利用して謎解き、または罠をしかけるといった方向に利用しているのもとても印象的でした。

 夜勤明けでちょっと仮眠してから観たので、体調を整えて、頭をリフレッシュした状態でもう1回観たいなと思いました。2回目鑑賞でまたスコアは上下するかもしれませんが、間違いなく完成度が高い1本でした。おすすめです!!!