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ヨーロッパ新世紀

ヨーロッパ新世紀の作品紹介

ヨーロッパ新世紀のあらすじ

鉱山の閉鎖によって、経済的に落ち込んだトランシルヴァニア地方の村。出稼ぎ先のドイツで暴力沙汰を起こした粗野な男マティアスが、この土地に舞い戻ってくる。しかし疎遠だった妻との関係は冷めきっており、森でのあることをきっかけに口がきけなくなった幼い息子、病気で衰弱した高齢の父への接し方にも迷うマティアスは、元恋人のシーラに心の安らぎを求める。ところがシーラが責任者を務める地元のパン工場が、スリランカからの外国人労働者を迎え入れたことをきっかけに、よそ者を異端視した村人たちとの間に不穏な空気が流れ出す。やがて、そのささいな諍いは村全体を揺るがす激しい対立へと発展し、マティアスやシーラの人生をも一変させていくのだった・・・。

ヨーロッパ新世紀の監督

ヨーロッパ新世紀の出演者

原題
R.M.N
公式サイト
https://rmn.lespros.co.jp/
製作年
2022年
製作国
ルーマニアフランスベルギー
上映時間
127分
ジャンル
ドラマ
配給会社
活弁シネマ倶楽部、インターフィルム

『ヨーロッパ新世紀』に投稿された感想・評価

2022年・第75回カンヌ国際映画祭コンペティション。監督のクリスティアン・ムンジウは、『4ヶ月、3週と2日』で第60回カンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞後、『汚れなき祈り』で再び第65回カンヌ国際映画祭で脚本賞と女優賞をW受賞、『エリザのために』第65回カンヌ国際映画祭監督賞を受賞したルーマニアの巨匠。
作品の舞台は、ブラム・ストーカーの『ドラキュラ』の舞台として知られるルーマニア・トランシルヴァニア地方。ヨーロッパの東に位置し、戦争や占領の歴史的背景の中で、ルーマニア人、ハンガリー人、ドイツ人、ロマ人など、さまざまな人々が生活し、また、それに伴い、言語、宗教、文化が混じりあっている。
そんな東ヨーロッパの小さな村で起きる物語は、小さな対立、小さな差別。しかし、はたして小さな物語か。今、世界で起きている戦争や対立は、どのような理由で生じているのか。日本国内で、日々、問題となっている事件は、どんな理由が原因なのか。この作品を観ているうちに、実はこの作品で描かれていることが、自分たちのすぐそばにあることに気づいた時、戦慄します。

<以下、詳細レビューです>

『ヨーロッパ新世紀』トランシルヴァニアの小さな村で起こる出来事は、世界の縮図。対立、混沌と、押し寄せるグローバリゼーションがもたらすものは。※NewsPicksに掲載コラムと同じものです
https://www.lifewithmovies.com/2023/10/RMN.html

2023年10月5日@オンライン試写
fujisan

fujisanの感想・評価

3.7
面白くはないですが、とても勉強になる映画でした。

カンヌの常連、ルーマニアのクリスティアン・ムンジウ監督による2022年作品。

ルーマニアのトランシルヴァニア地域を舞台にした外国人排斥運動の顛末を描いていますが、寓話的な映画となっていて、同じ問題は世界中にあることを提起している作品。

127分間に、およそ今問題になっているほとんどのことを詰め込み、解釈は観た人に委ねる、という作りになっています。(レビューが一番大変なやつです・・・😓)

以下、あらすじというよりも、テーマごとの項目でまとめていきたいと思います。
(ラストシーンの解釈などのネタバレ編は末尾に)


■ 映画で語られていること

□ 多民族国家
 ・映画の舞台、ルーマニアのトランシルヴァニア地域は多民族構成
 ・ハンガリー人 … ハンガリー統治時代が長いためハンガリー人が多い
 ・ルーマニア人 … 現在はルーマニアなので公用語はルーマニア
 ・ドイツ人 … 歴史上一時期ドイツ人が流入していたためドイツ人も
 ・以外 … 不足する労働力を補うために移民が流入

□ 貧富の格差
 ・映画の主人公は出稼ぎ先のドイツから帰国
 ・ルーマニア人は自国内の賃金が安く、他国へ出稼ぎ
 ・結果、自国内はエッセンシャルワーカー中心に人手不足
 ・自国内の人手不足を補うため、最低賃金の安い他国から労働力受け入れ

□ 外国人排斥(ゼノフォビア)
 ・映画のストーリーは村のパン工場が受け入れたスリランカ人の排斥
 ・EUの補助金が欲しいパン工場経営者と閉鎖的なムラ社会の構図
 ・”追い出すのは神の教えに逆らうのでは?”
  →”いや、神が定めた場所に居るべきなんだよ!” 😨?

□ 有害な男らしさ(トクシック・マスキュリニティ)
 ・映画「バービー」でも語られた、時に暴力を伴う”有害な男性らしさ”
 ・本作主人公は、嫌がる子どもに”男らしさ”を強要

□ グローバリズム
 ・村の数少ない働き場所であるパン工場のオーナーとマネージャーは
  移民を受け入れてEUと連携すべし、という考え

その他、ロマに代表される人種差別問題、老人介護やフェミニズムなど、細かいところを拾うとまだまだありそうですが、とにかくいろんな問題が映画内で語られます。


■ 寓話的な物語

上記問題を、おとぎ話の『アリとキリギリス』のように象徴的なモチーフで語ることによって、トランシルヴァニアでの固有の問題ではない、と表現しています。

・羊と熊(搾取される側と搾取する側)
 ・主人公マティアスの出稼ぎ先はドイツの羊肉加工工場
 ・実家に残る父は、村で羊飼いを営む
 ・村周辺は熊の生息地であり、途中で羊が減る事件が発生

・熊
 ・EU的には、個体数が減っている熊は保護すべき存在
 ・村民にとっては、畏怖すべき存在でありつつも、害獣
 ・熊=古来からの野生生物=暴力性を伴う保守的な存在

・音楽『梅林茂/Yumeji's Theme-夢二のテーマ』
 ・パン工場の女性マネージャーはチェロを嗜む文化的な人
 ・移民受入にも寛容
 ・奏でる音楽もアジアの曲=彼女自身がグローバルな人を体現


■ 映画の特徴

□ 青白い映像
青白い色調に統一された映像は不気味でありつつも、リアルさを消して、より寓話的な物語である印象を強めている

□ カラー字幕
本作は様々な言語が飛び交うことそのものが意味を持つため、字幕には言語別に色がつけられている
・ルーマニア語:白
・ハンガリー語:黄色
・その他の言語:ピンク

□ 17分長回し
一番の見せ所は、終盤の村の集会所内での大激論のシーン。
固定カメラによるワンカット17分間の長回しでアドリブのように見えるが、全て脚本通り喋っているらしい

□ 原題R.M.NとはMRI(医療用機器)のこと
世界の現状を輪切りにした断面で表すという意味と、ルーマニア(Romania)のダブルミーニング、と思われる


■ 感想

いかにもカンヌ向きの映画で、巨匠による難解な映画でした。

エイターテインメント性は全く無く、説明も圧倒的に不足しているので、自国内の問題であればともかく、ルーマニア映画としてこれを観る人が少ないのはしょうがないかなと思います。

ただ、監督がインタビューなどで語っているように、内容はルーマニアの一地方だけにある問題ではなく、世界中で普遍的に、また増えつつある問題であるということはよく分かりました。

日本でも高齢化による人手不足と外国人労働力の受入は避けられない問題であり、円安ということもあって世界的に労働力の安い国になりつつあり、劇中で語られる多くの問題は共通していました。

また、映画を通して日本では馴染みの薄いルーマニアのことを学べたことは、良かったと思います。


本作は、唐突な始まりから、あっけなく意味不明な終わり方まで、全編を通して謎だらけの映画。
以下、勝手な考察になりますが、ネタバレ編としてメモを残しておきます。





















以下は勝手な考察です(ヒントはほとんどないので、空想の世界)

1.ラスト、なぜマティアスは銃を持ってシーラの家に行ったのか
・シーラを殺しに行ったんだと思っていましたが、監督のインタビューによると、”助けに行った”のだとか

2.シーラはなぜ謝ったのか
理由は2つ、もしくは2通り
・フランス人NGOの青年と体の関係を持っていたため、恋人を自称するマティアスに殺されると思ったから
 ・マティアスの父の葬式前に二人の関係を表すシーンがある

・マティアスの父が飼っていた羊を熊に与えていたことがバレたと思ったため
 ・羊の数が減っているシーンがあり、マティアスは羊泥棒を疑っていた
 ・熊の保護を訴えるフランス人NGO青年と恋仲
 ・マティアスはシーラを疑っていなかったが、シーラは勝手にバレたと思った

3.シーラを襲ってきた熊、熊たち
・一頭目は本物の熊のように見えたが、マティアスが森の中に追った先に居た熊たちは、人間がクマの着ぐるみを被ったもの
 ・熊の頭のサイズがアンバランスに大きく、作りもチープ
 ・マティアスを襲うでもなく、眺めるだけ

1~3から、
・ムラの意思に沿わないシーラを熊の格好をした集団が襲おうとしていた
・マティアスはそれに気づき、シーラを救おうと家に行った
・家に侵入しようとした一頭目に発砲し、そのまま森へ追った
という感じでしょうか。

・マティアスが最後に振り向いた意味は?
 ・監督のインタビュー にヒントがありますので、紹介しておきます。

Q:クライマックスの場面で、マティアスは何を撃つのでしょうか。
『ヨーロッパ新世紀』クリスティアン・ムンジウ監督 エンパシーと愛について【Director’s Interview Vol.362】 :3ページ目|CINEMORE(シネモア)
https://cinemore.jp/jp/news-feature/3173/article_p3.html#ap3_1


以下は、考察をギブアップしたもの😓

・結局、ルディは冒頭で何を見たのか
 ・考えられるのは、熊、死体のどちらか
 ・ルディが野生動物を怖がっていないシーンがあるので、死体の可能性が高い
 ・では誰の死体?っていうのは、全くわからない

・三人目のスリランカ人労働者ラウフはどこにいった?
 ・マティアスが駅まで迎えに行ったラウフだが、居なくなる
 ・映画の終盤、マティアスが誰かの家に銃を持って踏み込んだ時に、
  複数の男性の姿と、警官の後ろ姿が映るシーンがあるが、
  何か関係ある?(まったくわからない)


ということで、勝手な考察含め、長文失礼しました。

もしここまで読んでくれた方がいらっしゃったら、どうもありがとうございます!😊ついでにコメントお願いします!




2023年 Mark!した映画:300本
うち、4以上を付けたのは33本 → プロフィールに書きました
開明獣

開明獣の感想・評価

5.0
クリスティアン・ムンジウ監督の名を浅学寡聞にして知らず、パルムドール受賞歴を持つ、ルーマニアの名匠だとのこと。

ならずもの国家、イスラエルの非人道的な殺戮行為が世界中の眉を顰めさせている中、人種間の軋轢は世界各地でその火種が潜んでいることを表した一作。

ルーマニアのトランシルヴァニアといえば、ドラキュラ伯爵の伝説で有名な地だ。ブラム・ストーカーが、バンパイヤ小説の始祖的名作「ドラキュラ」を著して以来、当地の領主は吸血鬼の汚名を着せられることになってしまった。丁度、リチャード3世がシェークスピアによって貶められてしまったように。言われのない誹謗中傷がかつての領主に対して行われた地で、今度は、外から来た人間に対して同様な迫害をしようとする物語。

そのトランシルヴァニアでは、ルーマニア人が人口の大分を占め、他にハンガリー人やドイツ人も住んでいる。EUがジプシーの呼称をとりやめ、旧来からのロマの呼称を正式採用して以来、ルーマニア人はジプシーという蔑称で差別されることがあるようになったという。ルーマニア語、ハンガリー語、ドイツ語、フランス語、英語が飛び交う一見インターナショナルな地域だが、その地にあるパン工場に、スリランカからの出稼ぎ労働者が来ることで、街の人々の感覚が狂いだす。

ドイツで出稼ぎをしていたが、暴力を振るって街に舞い戻ってきた、暴力を信条とする野卑な主人公マティアス。地元の人間の代わりに外国人労働者を低賃金で搾取する経営者。差別的な根拠のない学説を信奉する医師。他者を認めないものを、信仰の名の下において鎮めようともしない司祭。外国人労働者を助けてはいるが、平気で妻子ある男と寝る女性。自分たちの都合のよいように民主主義を歪曲して濫用する街の人々。

実は平穏な時であれば、ごく普通の人たちが、人種という問題が浮き彫りになった途端、上記のようにとても共感出来ないような人間に豹変してしまう。

パンフレットを読んで知ったのだが、原題のR.M.N.とはルーマニア語で、MRIのことだそうな。見えない病巣は誰に潜んでいるか分からない。その邦題は明らかな失敗であろう。ここにあるのは、ヨーロッパだけではなく、我が国も含めた世界中にある普遍的な問題なのだから。

結末に関しては、諸説あるのではないだろうか?自分なりの解釈をネタバレにしてコメントに書き込んでみたので、ご興味あるかはご参考まで。

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