猫目

アルマゲドン・タイム ある日々の肖像の猫目のレビュー・感想・評価

3.7
監督ジェームス・グレイの幼少期の経験をを元にしたほろ苦映画でした。1980年代のNY。

近年、映画監督自身の子供の頃を思い返した映画が多いけど、彼らの傍らには素敵な言葉を紡ぐ大人がいますね。今回の主人公ポールの良き話し相手は祖父のアーロン(アンソニー・ホプキンス)。公立校に通い、美術が好きで授業中にも絵を描いていて学校から「鈍い子」と思われているポールにも「いかなる失敗をしようとも、いつも高潔であれ」と説く。この辺をちゃんと受け止めていることが、現在映画監督でいられる由縁なんだろうなと思う。
それと共に描かれるのが、この時のアメリカの世相。時は1980年代、ロナルド・レーガンが大統領選に新自由主義社会を掲げて出馬し「強いアメリカ」に移り変わろうとする唸りの中、ユダヤ系の出自であるため、それに反発したくてレーガンを嫌っているポールの両親。しかし、ポールが学校で頻繁に問題を起こすようになり、それに仲良くなった黒人少年が関わっていることを知るや否や私立校へ転校させてしまう。
そこからのジョニーの行方はわからない。

親として、子供に将来的に辛い思いをさせたくないという気持ちがポール自身を尊重するより前に出てしまっているけど、この時代の親の考えも理解できるような気がした。

新しい学校はトランプ一族の息のかかった私立校。教育方針からも白人主義の無神経さが窺われます。ポールは社会格差に直面し、恐怖にも近い感覚を抱くのだけど、それに抗うことまではできなかった。
結局、富裕社会に居続けてしまったという現実を監督は隠す事なく描き、自らに起きた「アルマゲドン・タイム」を基に社会の不条理とそれに対する意識の転換を伝えようとしているようでした。
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