スワヒリ亭こゆう

トリとロキタのスワヒリ亭こゆうのレビュー・感想・評価

トリとロキタ(2022年製作の映画)
5.0
ダルデンヌ兄弟の作品です。
何十年も二人で映画を作ってる兄弟は本作で第75回カンヌ記念大賞を獲得しました。
それがどのぐらいパルムドールに比べて価値のある賞なのかは分かりませんけどね。
それでも、本作は凄い映画でした。

人間は平等だというのが如何に戯言かという事を痛感させられました。このトリとロキタの様な移民や難民の前で、そんな戯言は口が裂けても言えませんね。搾取する側される側の構図をここまで分かりやすく強烈に描いた本作を観て何も感じない人は残念過ぎます。いや僕は軽蔑するな。

本作の主人公はアフリカから地中海を渡りベルギーに移民してきた若い姉弟の話です。
ですが、この姉弟は血は繋がっていなくて赤の他人。たまたま移民する時に乗り合わせた舟で一緒になり仲良くなり二人で力を合わせて一緒にいるんですね。
弟のトリはビザを持っているけど、姉のロキタはビザが無いんです。
それが故にやりたい仕事も出来ない。弟とは偽姉弟だけど、本当の姉弟と偽ってビザを得ようとするが認めてもらえない。
そんな二人はイタリアンレストランで、客前でカラオケを唄って日銭を稼ぐ傍らで、そのイタリアンレストランのシェフがやってるドラッグの密売を手伝い金を稼いでいるんです。

ダルデンヌ兄弟のオリジナルの脚本だと思うんですけど、この映画で描かれている事案については【嘘】や【作り話】で片付ける訳にはいかないでしょうね。恐らく、この姉弟の様な移民者はベルギーには沢山いるし、世界を見渡すともっと闇が深いでしょう。
ロシアによるウクライナ侵攻によりもっと難民の数は拡大されているとも言えますよね。

主人公の孤独な子供達は姉弟として友情で固く結ばれた絆だけが頼りです。それなのに未成年の亡命した人に対して、ここまで悪意が闇が襲ってくる物語に僕は釘付けになってしまいました。
先程も言いましたが、人間は平等じゃないんです。
トリとロキタの深い友情物語であると同時に社会の闇を描いている。
まだ若いロキタともっと若くまだまだ子供のトリ。
この二人の演技も素晴らしく、とにかく圧倒されました。
全く無駄なシーンのない映画だと思います。
多くの人に観てほしい映画です。