しゅんすけ

クライムズ・オブ・ザ・フューチャーのしゅんすけのレビュー・感想・評価

3.5
「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」

新宿バルト9で鑑賞しました。
うーん、クローネンバーグ監督最新作とのことで期待しましたが、観てる自分が過度に期待してしまいました。正直物足りなかったです。

話の展開的には、ロシアン・マフィアに属する運転手を描いた「イースタン・プロミス」に結構共通する部分があるな~と思いながら観ていたのですが、途中から「この話、どう決着つけて終わるんだろう」と思ってたうちに、え、これで終わりかという感じでした。

難解な哲学的でアート的な映画、もしくは、ひたすらグロテスクな映像満載のジャンル映画的な部分のどちらにも全振りできていない感じでちょっともやっとした感じが残りました。

結局この映画が何を伝えたかったのかは、正確にとらえられてる気はまるでしないのですが、例えばタトゥーやピアスを開ける行為についての考察なのかなと思いました。
タトゥーやピアスはアートで、粉瘤とかは病気でありアートではない、タトゥーやピアスはOKで、じゃあ内臓に描くアートはNGなのかというその辺のよくわからない線引きについて描いているのかなと。

あとは、後半のテーマになってくる「人類の進化」を認めるかどうか問題(=国籍や皮膚の色ではない、新しいタイプの人種差別)についてでの映画であると思いました。ただ、ここまで壮大なテーマなら108分の尺はちょっと短すぎる気がしました。

個人的には、クリステン・スチュワートの不穏な感じ、暗い感じがどストライクだったので、もっとヴィゴ・モーテンセンとレア・セドゥの間に入って搔き乱す展開を期待してたのに、そういうわけでもなかったのは残念でした。(ただ、あいかわらず演技はすばらしい)

あと、レア・セドゥは体を張っててほんとに凄いと思います。「フレンチ・ディスパッチ」でも思いましたが、ここまで映画のためにそういう過激なシーンにもチャレンジする女優さんは応援したくなります。

クローネンバーグ監督らしい映画、テーマではありますが、「ザ・フライ」や「ヒストリー・オブ・バイオレンス」、「イースタン・プロミス」みたいに純粋に完成度が高い映画、「ビデオドローム」みたいな尖った映画には及ばないちょっとヌルい映画だったかなと思います。

クローネンバーグの過去作で「スパイダー」と「イグシズテンス」という映画があるのですが、観返したいのにどこも配信をしていないし、レンタルビデオ屋さんにもおいてないので、どこかやってくれないかなと思う、映画鑑賞後でした。