Omizu

哀愁の湖のOmizuのレビュー・感想・評価

哀愁の湖(1945年製作の映画)
4.3
【第18回アカデミー賞 撮影賞受賞】
戦前から活躍する『王国の鍵』ジョン・M・スタール監督のフィルム・ノワール。主演は『ローラ殺人事件』ジーン・ティアニーと『楽聖ショパン』コーネル・ワイルド。アカデミー賞では主演女優賞、撮影賞(カラー)、美術賞(カラー)、録音賞の4部門にノミネートされ撮影賞を受賞した。

スタール監督は存じ上げなかったが、メロドラマの巨匠ダグラス・サークの代表作二作はスタール監督作品のリメイクだそうだ。『悲しみは空の彼方に』は『模倣の人生』、『心のともしび』は『愛と光』のリメイク。このことからもスタール監督の資質が分かるだろう。

話を一言で表すなら「惚れた女がヤンデレ束縛系だった」ということになろうか。

まず撮影は本当に素晴らしい。昔の映画なので画質が落ちているとはいえ、色彩を印象的に使った美術と衣装、それらを鮮烈に捉えた撮影は惚れ惚れする。ビジュアル面に関しては超一級品。

メロドラマのように始まる冒頭からどんどん狂気が増していき、サスペンスフルな法廷劇になる終盤まで引っ張っていく演出力も見事なもの。ジーン・ティアニーがどんどん怖くなっていく。

序盤にそれとなく語られていたエレンの父の死、それが効果的に表れてくる。夫や家族が良かれと思って色々とやるのにエレンはそれらを全て逆の意味で捉えてしまう。

エレンの暴走、と思いきやそうでもないところがミソ。夫リチャードはエレンを本当に愛していたのか、本当に愛していたのは誰かを考えると、エレンの過激すぎる行動はそこまで間違っていなかったのかもしれない。

ラストカットは蛇足かなとは思ったが、鮮烈なビジュアルで過激な愛の行方を描いた秀作だと思う。愛を信じ続けることって難しい。
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