鷲尾翼

帰れない山の鷲尾翼のレビュー・感想・評価

帰れない山(2022年製作の映画)
4.0
【まとめシネマ】#1087

【まとめ】
* 都会育ちのピエトロと山育ちのブルーノ
* 映像の美しさと広大な恐怖
* 8つの山から帰れない

ミラノの都会で育った繊細な少年・ピエトロは、山が好きな両親に連れられ、山の小さな村で休暇を過ごしていた。自然が広がる山で育った少年・ブルーノは、ある日ピエトロと出会い、すぐに仲良くなる。しかし、父親の趣味である登山に同行したピエトロは高山病になってしまい、それ以降ピエトロとブルーノとの友情に距離が生まれ、次第に疎遠になってしまう。月日は流れ、ピエトロの父親が突然亡くなったことをきっかけに、ピエトロとブルーノは十数年ぶりに再会する。

本作で印象的なのが、映像の美しさ。
フィルムの質感やアスペクト比にこだわった映像の数々は、広大な自然の美しさ、その素晴らしさを終始感じる。その中で描かれる二人の物語にも、自然美のエフェクトが混ざり合い、清涼な空気の温度が物語の緩急を彩る。そして、題名に「帰れない」とあるように、どこまでも遠くに向かい広大な自然美を映し続ける映像が、自然の恐ろしさにガラッと変化する。

本作には「8つの山」という言葉を語るシーンがある。
「最も高い山を中心に、その周りには8つの山が囲んでいる」という古代インドの世界観や概念が語られる。その言葉を思うように、本作の結末には残り続けるものがあり、時にそれを罪に思ってしまう。
鷲尾翼

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