スワヒリ亭こゆう

ヴィレッジのスワヒリ亭こゆうのレビュー・感想・評価

ヴィレッジ(2023年製作の映画)
3.4
藤井道人監督の新作はいつからか映画館で観るのが僕の中で恒例になりました。
映像が美しく、フィルムの質感やカメラワーク、カット割が映画に引きこまれるんですよね。
詭弁を語る事なく、偶像を描く事なく、実情を冷たい温度で描いている感じが好きです。

そんな藤井監督の新作!と言っても1年でどれだけ仕事するんだろ?ってくらい次々と映画が公開されるので新作の期間が短いのも凄いです。

話は戻りまして『ヴィレッジ』です。
その名の通り地方の村が舞台の映画です。
主人公の片山優を横浜流星さんが演じています。
舞台となる霞門村は山に囲まれてその山にゴミ処理場がある。
村の上にゴミ処理場が聳え立つ、まるで神殿の様な異様な光景の霞門村でのストーリーは村と片山優を闇に飲み込む様に描いていきます。
【限界】そんな言葉が脳裏に過ぎります。

片山優の素性は訳ありで村八分にされているにも関わらず、親の遺した借金で村から出る事も出来ずにゴミ処理場で働いている。そこに東京から帰ってきてゴミ処理場で働き始めた美咲(黒木華)と出会い、優の人生が少しずつ変化していくんです。
それでもどっぷり闇に浸っている優。

映画として前半は面白かったです。
特にトオルという村長の息子が良くて、コイツが美咲に惚れて美咲は優に惹かれている。この三角関係もただの思い思われ恋焦がれでは済まない。危うさが際立ってます。
トオルは一ノ瀬ワタルという元格闘家が演じていて、凄く強烈なキャラクターでした。
コイツには力では抗えないのは容易に想像出来るし、目をつけられると絶望感も出てきます。

ヒロインの黒木華さんは僕は全く惹かれないので、この女優にしろ横浜流星にしろアップが多すぎると思いました。
後半の失速はヒロインの魅力の弱さと筋書きの弱さ。ストーリーは予測の範疇でした。

村というのが映画のテーマになった時に破滅的な展開になるのが日本の現実なんでしょう。
楽しく親しみが籠った村映画という事で現実的な話は出来ない。そういう日本の現実を描いた藤井監督ならではの映画だったと思います。